もはや政府広報―NHK「高市忖度報道」の惨状

 高市早苗氏は以前から平気でウソをつき、追及されると荒唐無稽な言い訳をすることで知られていた。また、言い訳が通用しなくなっても訂正しない。こうした“習性”は首相になった現在、より目立ってきたように思われる。
https://takase.hatenablog.jp/entry/20230315

 また、高市氏は総務相時代からメディアに手を突っ込み、露骨に自由な報道を規制しようとしてきた前歴がある。

 その高市首相に忖度する報道がメディア界に広がっている。とくにNHKが酷いとの指摘が私の知る人々から上がっている。

 まず、NHKで数多くの番組を制作したドキュメンタリー映画監督・池谷薫氏の10日のFBより―

池谷氏のFB

《ゆうべのNHKニュース7には思わず笑ってしまうほど呆れた。高市首相の中傷動画疑惑で「みずからの流儀ではない」などと否定する高市首相の言い分を一方的に伝えて終了。しかも首相の音声は一切使わず、アナウンサーが読み上げるという念の入れ方だった。ジャーナリズム精神のかけらもなく、これではまるっきしの政府広報である。

 以下、首相の言い訳を「代弁」した内容である。これをアナウンサーが淡々と読み上げている画面を想像してほしい。その異常さがわかるはずだ。

 「高市総理大臣は8日夕方、総理大臣官邸で記者団の取材に応じました。この中で高市総理大臣は『これまで答弁してきたが、それは揺るがない。私自身も、私の事務所も、去年の総裁選挙で応援してくれた議員も含めて、他の候補者をひぼう中傷することは私の流儀でもないし、決してやっていない』と述べました。」

 アナウンサーはどんな気持ちでこれわ読み上げているのだろう。正義を伝えようとこの職を志したはずである。その胸中を察すると哀れにさえ思えてくる。

 高市首相の中傷動画疑惑は、文春が動画作成者と首相秘書のZoom会議の音声を公開し、共同通信も首相秘書から相談されてやったと動画作成者が証言する記事を配信するなど新たな局面を迎えている。それだけにNHKのなりふり構わぬ政権への忖度ぶりが際立つ。いつかこれが本物の「大本営発表」にならないことを願わが、そのためには放送法を改正し、NHKを国民の関心に真摯に向き合い、権力を正しく監視する真の報道機関につくり変えなければならない。》

 また、元NHKチーフ・プロデューサーのジャーナリスト、長井暁(ながい さとる)氏は11日のFBで以下の投稿。

《昨年12月に次期NHK会長に指名された時、井上樹彦会長は「NHKの報道の根幹である、正確で公平公正な報道というのは、これはNHKに限りませんが、報道機関の生命線というか、根本のところだとだと思う」「政治的圧力に屈するだとか、そういったことに忖度するといったこと自体が、この一番根幹の大事な生命線を傷つけることになりますので、そういう報道機関は自らのよって立つところを崩してしまうことになります」と述べた。

 18年ぶりの職員出身の会長が生まれるということもあり、もしかしたらNHKが政治に忖度しないニュースや番組を放送してくれるようになるのではないかと、私は淡い期待を抱いた。

 しかし、そうした期待は「高市陣営が他候補の中傷動画を投稿したとされる問題」に関するNHKの一連の政治ニュースのあまりの酷さに、完全に打ち砕かれた。

 NHKが「中傷動画問題」に関して出稿したニュースを見ると、「高市首相 衆院選などでの陣営による中傷動画投稿報道を否定」(5月8日)、「高市首相 衆院選などで陣営が中傷動画投稿の報道を改めて否定」(5月11日)、「高市首相 総裁選などで中傷動画投稿の報道に“関与一切ない”」(5月13日)、「高市首相 中傷動画に関与発言の男性と『会ったことない』」(5月19日)、「中傷動画“第三者に作成・発信を依頼したことない”高市首相」(5月22日)、「高市首相 中傷動画やりとり“事務所パソコンで確認できず”」(5月28日)と、どれも徹底して『週刊文春』の報道内容を無視して伝えず、高市総理大臣の主張(弁解)を一方的に伝えるものばかりであった。しかもそうしたニュースですら、「ニュース7」や「ニュースウオッチ9」ではほとんど放送しなかった。

 6月4日、衆議院予算委員会でのこの問題の質疑についてめずらしく「ニュース7」と「ニュースウオッチ9」が放送したと思ったら、「高市首相 中傷動画の関連音声 動画作成のやりとりではない」という、視聴者にはほとんど理解不能な28秒のニュースを流しただけだった。

 さらに「共同通信」が「総裁選で小泉氏批評動画・首相秘書から相談と作成者」という記事を6月7日に配信し、それが6月8日の地方紙に一斉に掲載されると、その日(6月8日)の夜に放送された「NHKニュース7」と「ニュースウオッチ9」は、「共同通信」が配信した記事の内容を一切紹介することなく、高市早苗総理大臣の弁明コメントのみを1分半近くにわたって一方的に垂れ流した。

 NHKのこうした実情を見ると、NHKの政治ニュースは完全に総理官邸の御用ニュース、政府広報に成り下がってしまったというほかはない。久しぶりに生え抜きの会長が誕生したことに期待した私がバカでした。》

長井氏のFBより

長井氏のFB

 税金を投入され、視聴者から受信料をもらって運営されるNHKにこんな偏向報道は許されない。我々は外からの批判、抗議を強めるが、内部からの「反乱」はないのか?