さあ飲めと威(おど)しのついた和平案 (京都府 近藤 達)
おねだりにオスロはよもや揺れるまい (青森県 佐藤やす子)
2日の朝日川柳より
二句目は、トランプがノーベル平和賞を露骨に「おねだり」しているが、ノルウエー・オスロの審査員は動揺しないだろうという意味。しかし、トランプのことだから、平和賞に選出されなかったら、ノーベル委員会に制裁を科したりして。
トランプがガザ和平案を示し、これにイスラエルが賛成したとのニュース。
アメリカは、停戦と人質・受刑者の交換のほか、イスラエル軍のガザからの段階的撤収、ハマスの武装解除、国際機関が主導する暫定政府の樹立を柱とする20項目のガザ和平案を公表。具体的には、イスラエルが合意を受け入れてから72時間以内に全ての人質を帰還させる。これには死亡した人質の遺体も含まれる。イスラエル軍は人質の解放準備のため、合意されたライン(位置)まで撤収。その後、全ての人質の解放が完了した段階で、イスラエルは終身刑を受けているパレスチナ人250人のほか、2023年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲以降に拘束されたガザ地区の住民1700人を解放する。
和平案では、ガザの日常的なサービスを一時的に担当するパレスチナ専門家委員会の設立を提唱。この委員会を監督する「平和理事会」は、トランプ氏が議長を務め、トニー・ブレア元英首相も参加する。
サウジアラビア、ヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、エジプトなどアラブ・イスラム諸国の外相は、トランプ氏によるガザ戦争終結に向けた発表を歓迎するとの共同声明を出した。(ロイターより)
極限まで痛めつけ、追い詰めておいて、さあこれを呑まないと、もっとひどいことになるぞと脅す。イスラエルがヨルダン、イエメン、シリア、イランさらにはオマーンまで傍若無人に軍事攻撃を行うなか、すっかりビビッたアラブ諸国も歓迎するという。外堀を埋められた形のハマスは、苦しい。不条理がまかり通っている。


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ICCへの制裁のテーマの続き。
アメリカ、ロシア、イスラエルは、ICC(国際刑事裁判所)の裁判官や検察官に制裁を科してきたが、トランプ政権はICC本体を制裁する準備に入っているという。もし、制裁が発動されたらどうなるのか。
ICCそのものが制裁対象になれば、世界中の金融機関や組織がICCとの取引を止める可能性が高いという。そうなると職員への給料その他の経費が払えなくなり、各国からの拠出金も受け取れなくなる。
制裁を見越して、すでにICCとの取引を敬遠する金融機関も少なくない。アフリカ諸国やウクライナのICC事務所への送金もアメリカの銀行を中継しない送金方法を採る必要があるという。赤根智子所長が制裁対象になれば、アメリカと取引のある日本の銀行の口座まで凍結され、クレジットカードも使えなくなる。
このような危機の状況においても、赤根所長は取材した駒村歩美氏に毅然と語っている。
「法の支配や民主主義は、人類が叡智を求めて進んできた歴史の積み重ねでできたものです。それらを守り育てていく責務が人類全体にあり、そのための一つの役割がICCという国際的な裁判所に課されているのだと思います。だからこそ今のICCを守り育て、その先にある法の支配が廃れないようにすることが必要なのです」
ICCは、第二次世界大戦終結の処理のために開かれたニュルンベルク裁判などの系譜を継ぎ、2002年に設立された。
「20世紀前半の二度の世界大戦による甚大な被害によって、人類の良心が深く傷つきました。だからこそ、そういう惨禍を防ぐために裁判をし、国際法違反の命令をする人を処罰しようとしてきたわけです。最初のニュルンベルク裁判と東京裁判は、戦勝国による中立性に欠く裁判だという批判もありました。それらの経験を踏まえ、国連の旧ユーゴスラビア特別法廷(ICTY)、ルワンダ特別法廷が開かれました。その結果、恒久的で世界的な刑事裁判所をつくろうという流れになり、段階的に学びながらICCができたのです」(赤根所長)
ICCは冷戦終結後、国家間紛争の少ない時代に機運が高まって設立に至った。
「ICCはまだ20数年しか活動していないので、それで世界を平和にできたわけではありません。しかし、重要なのは、恒久的な裁判所として将来も活動を続け、中核犯罪を抑止していくことです。そのために今後も実績を積み上げる必要があり、努力し続けなければなりません」(赤根所長)(引用は駒林歩美「法の支配を田絵が守るのか」世界9月より)
中核犯罪とは、ICCが扱う集団殺害犯罪(ジェノサイド)、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪という四つの重大犯罪をいう。こうした中核犯罪は、国際的に裁かれ、解決されなくてはならない。
例えば、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)は「人道に対うる犯罪」の一つだが、国際社会がほぼまとまって(アメリカもソ連も)厳しい制裁(スポーツや文化イベントも参加できないほどの)を科しつづけ、ついに1991年に主要な隔離法が廃止され、1994年の全人種参加による総選挙でネルソン・マンデラが大統領に就任し、終結した。
ICCは、こうした中核犯罪の責任者を犯罪が侵されつつある現在進行中に訴追し裁くことによって、大きな抑止効果を持つことができる。
(つづく)