「トランプ大統領就任」
まだだったのか―世界の人々
(東京・やす坊)
これは今日の朝日新聞の「かたえくぼ」という世相を捉えた笑える短文のコーナー。
就任前から大騒ぎが続いていて、とっくに大統領になっていたのかと思ったというもの。
就任するや一気に大量の大統領令に署名するパフォーマンスは、その内容を見ると背筋が寒くなる。WHOもパリ協定からも脱退、メキシコ湾はアメリカ湾にして、毎日「アメリカファースト」で行くという。アメリカとそして世界を根本的に作り変えようと、ものすごい規模とスピードで突進することが確実だ。

第一は移民の排斥。移民の越境を軍を動員して排除するだけでなく、「不法移民」を米国d生まれた子どももろとも国外に送還するという。米国で生まれた子どもに国籍取得を認める出生地主義を否定する大統領令に署名した。
第二は環境・エネルギー政策。「掘って掘って掘りまくれ」と化石燃料の大幅増産で脱炭素政策は骨抜きに。パリ協定から離脱して地球規模の気候変動対策にも大きな打撃を与えるだろう。
第三はDEI(多様性・公平性・包括性)政策の否定。性別は男と女性しかないと宣言。絶望して米国を脱出するLGBTQの人が少なくないという。すでに有名企業は次々と多様性目標の廃止や縮小にかじを切っているという。教育現場にも影響するだろう。
立法府は共和党が制し、しかも共和党自体がトランプ党になっている。閣僚はトランプの個人的なお気に入りを指名。最高裁判所は保守派が多数で、彼をチェックするものがいない。米国で過去見たことのないやり放題の独裁者になりつつある。
経済界も拍手喝采。数年前までトランプを批判していたハイテクビジネスのトップまでが彼の足下にひれ伏し、メディアも矛を収めたように静か。かつて各地で燃え上がった反トランプデモも鳴りを潜めている。
怖いのは、「マイノリティを尊重するのは白人抑圧」、「女性を多く登用するのは男性への差別」、さらには「○○人はIQが低いバカ」、「○○出身者は不潔で病気をまき散らす」などこれまでなら「それをいっちゃあ、おしまいよ」とされて口にしなかった(できなかった)ヘイトスピーチまで一般の人たちが遠慮なく公言するようになっていることだ。「世の中の底が抜ける」とはこのことか。

就任式に招待した外国の政治家の顔ぶれを見ると、国際政治においてもとんでもないことが今後起こることを予測させる。
英国スターマー首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相などは呼ばれず、EU首脳陣の中で招待されたのはイタリアの右派メローに首相やハンガリーのオルバン首相、そして他は右翼政治家の面々だ。
「トランプ氏は就任初日からヨーロッパを分断しようとしている」と大きな懸念が広がっている。
先日本ブログで書いた、トランプ型の政治家が民衆に支持されて登場する時代の雰囲気が非常に怖い。これは世の中がファシズムに向かっているのではないかと危惧する。
バイデンが素晴らしい大統領だったとは思わないが(とくにイスラエルへの巨額支援など)危機感あふれる退任のスピーチはうんうんと頷きながら聞いた。

「私はアメリカを真の危機にさらす可能性のあるテック産業複合体の台頭を懸念している。
国民は誤報と偽情報の雪崩に埋もれ、権力の乱用を可能にしている。
報道の自由は崩壊、編集者は姿を消し、SNSは事実確認を放棄している。
真実は権力と利益のために語られるうそによって覆い隠されている。」
テック産業複合体とは、かつてアイゼンハワー大統領が、軍需産業が巨大な影響力を持って自由と民主主義を危険にさらすとして「軍産複合体」という言葉を使ったのをもじったと思われるが、ITテック産業が影響力を増す中で、テクノロジーと権力と富が一部の少数者に集中する状況に警戒を呼びかけたものだ。
これから、どこに「抵抗」のタネと兆しを見いだしていけばいいのか、考えていきたい。大変な時代を見ることができるのは幸運だと思うことにしよう。