日本の政治を激震させた『しんぶん赤旗日曜版』

 新内閣発足から、わずか2週間。戦後最短での解散・総選挙となった衆議院選挙がきょう15日、公示された。

 そもそも、なんでこうなったかというと、岸田自民党総裁が再選を断念したから。では、その事態をもたらした「政治と金」問題を破裂させたのは何だったか。しんぶん赤旗日曜版』のスクープだったのである。

 今月5日、東京・日比谷図書文化館コンベンションホールで開かれた日本ジャーナリスト会議(JCJ)の「JCJ賞」贈賞式に参加した。2024 年度第67回 JCJ賞の大賞に選ばれたのは『しんぶん赤旗日曜版』の【自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン】だった。    
https://jcj.gr.jp/recentactivity/12198/

上西充子氏から大賞を授与された『しんぶん赤旗日曜版』の山本豊彦編集長(右)。筆者撮影

受賞者の記念撮影。大賞1とJCJ賞4。

 以下、JCJの発表文。

 【JCJ大賞】  『しんぶん赤旗日曜版』  自民党派閥パーティー資金の「政治資金報告書不記載」報道と、引き続く政治資金、裏金問題に関する一連のキャンペーン 

自民党の主要5派閥が政治資金パーティーのパーティー券大口購入者を、政治資金報告書に記載していなかったことをスクープした報道に始まった「しんぶん赤旗日曜版」の報道は、2023年から24年にかけての日本の政治を揺り動かした。公開されている膨大な政治資金報告書から、一つ一つを地道に積み上げ、検察の捜査にまでつなげ、それが大政治犯罪であることを明らかにした。 

 政治資金パーティーという、小さな問題に見えた事件は、実は政治資金問題の中心的問題で、事件の大きさは、自民党が公表せざるを得なかった議員が衆院51人、参院31人、計82人に上っていた(24年4月14日号)ことに示されるとおり、そのスケールの点では、1975年の「田中金脈」報道や、88年の「リクルート事件」報道を超えるものだった。 

 国会は安全保障政策の大転換を迎え、極めて重要な問題を抱えていたが、この問題に多くの時間を割き、秋に予想される、総選挙もしくは自民党総裁選を控え、「政治資金改革」は、いま、最大の政治的焦点となっている。こうした事態を引き起こしたのは、「しんぶん赤旗日曜版」の報道なくしてはできなかったことであります》

 このスクープは、『しんぶん赤旗日曜版』の22年11月6日号で、これにもとづいて神戸学院大の上脇博之教授が11月9日以降、自民党の5派閥団体の会長・会計責任者らを東京地検に告発して大きな山が動き始めたのである。

 実はこの直後は、どのメディアも後追いしなかったという。

 半世紀前、『文藝春秋』1974年11月号が立花隆の「田中角栄研究―その金脈と人脈」を載せた時、大手メディアの政治部記者たちが「そのくらいのことは皆知っている」とせせら笑ったことを思い出させる。日本の大手メディアは、検察が動くなどしなければ報じないのである。

 24年度の日本新聞協会の「新聞協会賞」は、「自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道」で、朝日新聞社自民党派閥裏金問題取材班が受賞している。授賞理由:朝日新聞社は、自民党安倍派が政治資金パーティーで組織的に巨額の裏金を作り、所属議員に還流していた事実を2023年12月1日付朝刊で特報した。
https://www.pressnet.or.jp/about/commendation/kyoukai/works.html

 これで分かるように、ようやく新聞が本格的にこの問題を取り上げるようになったのは、赤旗日曜版の報道の1年後だった。
 
 5日のJCJ贈賞式の記念講演は上脇博之教授というタイムリーな人選だった。ちょうど前日4日発売の『しんぶん赤旗日曜版』(10月6日号)が「石破派も裏金」のスクープを放ち、上脇教授がこれにもとづいて告発を行ったばかりだった。

しんぶん赤旗日曜版10月6日号

上脇教授は、3日、自らが代表の政治団体が開催した政治資金パーティーを巡り、政治資金収支報告書に収入を少なく記載したとして、石破茂首相のほか、政治団体の会計責任者ら4人に対する政治資金規正法違反罪での告発状を東京地検に出したと明らかにした。

 告発状によると、石破氏や鴨下一郎衆院議員が代表を務めた政治団体水月会」は2019~21年に開いた政治資金パーティーで、別の政治団体から計138万円の支出を受けたのに、収支報告書の収入に計80万円分少なく記載したとしている》(産経新聞記事より)

 『しんぶん赤旗日曜版』がこの問題でつぎつぎにスクープを放ってきたが、この調査報道には「気が遠くなるほどの」(JCJの評者)忍耐強い努力が必要だという。授賞理由に「公開されている膨大な政治資金報告書から、一つ一つを地道に積み上げ」とあるように、直近3年分のインターネット公表されている政治団体政治資金収支報告書と政治資金パーティの明細収支報告書などを突き合わせていく地道な作業。そのためには恐ろしい数のPDF文書を丹念にあたっていかなくてはならない。

 贈賞式後の懇親会は中華レストランで、私はそのスクープを手掛けてきた赤旗の記者とたまたま同じ丸テーブルにつく幸運にめぐまれた。彼の話はジャーナリズムとはいかにあるべきかを私たちに深く考えさせた。
(つづく)