ウクライナ最大の課題は経済の維持

 節季は立夏を過ぎて小満(しょうまん)になっている。太陽を浴びて万物が育ち、あらゆる命が満ちていく時期だという。

 21日から初候「蚕起食桑(かいこおきて、くわをはむ)」。

 次候が26日からで「紅花栄(べにはな、さく)」。

 末候が31日からで「麦秋至(むぎのとき、いたる)。

 みな、農作業に関連する候名だが、田植えの準備もあって農家は忙しくなる。
 青梅が出てきたら今年も梅酒を仕込みたい。
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 先日、某テレビ局のトップの人事が新聞に載った。

 おお、Sさんが社長になっているではないか。

 Sさんとはフィリピン囚人の腎臓移植ビジネスの取材で、刑務所の中に一緒に入って囚人をインタビューした思い出がある。

takase.hatenablog.jp

 このネタ(国家ぐるみの腎臓移植ビジネス)は当時の私の独壇場(キラーコンテンツ)で、3局(テレ朝、日テレ、TBS)で放送された。

 Sさん、たしかあのときが初めての海外取材で、見るもの聞くもの何でも珍しがる初々しい記者だったが、今や社長か・・。

 私が現場で取材をともにした記者でテレビ局の社長になったのは彼で4人目。私はたまたま出世する人たちとめぐり合わせたのか。

 Sさんは自民党の抗議にすぐに謝ったりした過去があり、メディアの独立性を守れるか懸念している。注視していこう。
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 毎日、ウクライナの町が破壊され、人々が傷つくニュースが流れ、同情が募る。

 今の事態は、二つの国が戦争をしているのではなく、一方的にウクライナが破壊され続けているのである。ロシアはミサイルで、キーウでも西部のリヴィウでもウクライナのどこでも攻撃しているが、ウクライナがモスクワを空襲することはない。国境のすぐ向こうにあるロシア軍の兵站基地さえもウクライナは攻撃していない。(一部の場所で攻撃を受けたとロシア側は発表したが、フェイクニュースかも)

 しかも、このブログで何度も指摘したように、ロシアが攻撃するのは軍事施設だけではなく、鉄道、電気、水道などのインフラからショッピングセンター、学校、病院、避難所まで破壊している。

 無差別攻撃という表現は生ぬるい。むしろ意識的に住民生活への打撃となる標的を狙っている。

 ロシアが制裁でGDPが前年比マイナス10%になるだろうなどとの予測があるが、ウクライナはそれどころではなく、侵攻後、年間GDPの3倍の被害を被ったという。

 つまり、一方的に殴られっぱなし、嫌な例えでいうとレイプされたようなもので、まあまあこのへんでお互い「痛み分け」で握手しましょう・・などという停戦案がウクライナ側として受け入れられないのは当然だ。

 激戦が続く南部ヘルソン市に近いミ港湾都市コライフ市の市長はNHKのインタビューに社会を支える経済が打撃を受けている現状をこう訴えていた。

《農作物の輸出がわが国のGDPの大半を占めています。ロシアは経済的にわが国を破綻させるために輸出の可能性をなくそうとしています。実際に海には多くの機雷があり、船を動かすことができません。》

しかしユーモアを交えて、人々が連日の破壊に立ち向かっているさまを語った。

NHKニュースより

《私たちはアリ塚を作り続けるアリのようなもの。何かが壊れるたびに朝から修復を始めます。きょうも夜のうちに攻撃があり、ガスや電気、水の供給設備が破壊されました。それをまた朝から技術者たちが修復を始めているのです。》
と言って微笑みを浮かべる市長。

 NHKの記者が、なぜそんなに明るいのですかと聞くと、市長はつとめて明るく振る舞うようにしているという。

NHKニュース


《戦時中は泣くか笑うかしかありません。できる限り冗談を言い、ユーモアで受け止めます。つらいことを乗り越えるためです。私は住民を励まし、街を復興しなければならないのです。》
 こう語る市長を尊敬する。

 クレバ外相も経済の維持を最大の課題としている。

クレバ外相(NHKニュースより)

 戦争は戦場でだけ戦われているわけではないのだ。

 人が傷ついた、建物が破壊されたとニュースでは報じられるが、戦争は社会全体を崩壊させるものであることを想像力を駆使してより深く考えていきたい。