沖縄の街を歩くと、「石敢當」(いしがんとう)が現れる。
T字路の突き当たりに置かれる、魔物(マジムン)を撃退する魔除けの石碑や石標のことだが、一つ一つ違った形で、これを見つけるのが楽しみになってくる。
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沖縄行きと編集でさぼっていた畑に久しぶりに行くと、追肥と耕耘の作業だった。一年で20種以上収穫することを目指し、これからいよいよ植え付けなどがはじまる。
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先日、ニュースで過去20年で540万人もの死者が出た紛争が特集されていた。場所はアフリカのコンゴ民主共和国(以下コンゴとする)。
東部にレアメタル鉱山があり、これをめぐって、政府側と反政府武装勢力とが泥沼の戦いを繰り広げている。内戦が長引くのは、レアメタル利権が資金源となるためだ。
この桁外れの犠牲者数に驚く。シリア内戦による死者が「約40~47万人以上」(外務省)とされるのと比べても10倍超。悲惨さは想像を絶する。
コンゴは、スマホやPC、EVの蓄電池などの原材料として使われるレアメタルの世界屈指の産地。鉱山では児童労働などの人権侵害も行われているとして、その消費が大きな問題になりつつあるという。
そこで、今後カギを握るのが、レアメタルのリサイクルだ。世界有数の鉱物資源輸入国である日本の現状と、リユース、リサイクルの最前線が紹介された。これはNHKのSDGs企画の特集である。
まずは、電子機器のコンデンサーに使われるタンタル。コンゴは世界最大の産出国だ。
終わりを見せない内戦に疲れ切った東部の人々は、「苦しみを誰も気にかけてくれない」と感じているという。この実態をふまえ、米国などは2010年から、家電、自動車メーカーに対して、コンゴ産タンタルを使用する場合、産地特定を義務付けている。
ところがタンタルは、メーカーに届くまで、多くの段階を経るので、産地特定が難しい。原石はコンゴの国外に運ばれて精錬され、そこから別の国の部品メーカーにわたったうえ、製品を販売するのはまた他国の業者だ。出所が特定できた企業はわずかに6%しかないという。(電子技術情報産業協会JEITA調べ2017)
立命館大のジャンクロード・マスワナ教授は、「企業や一部の人が利益を独占しているかぎり、それを手放すことはありません。国際社会が悪循環を止めなければ、このビジネスモデルは続いてしまうのです。」と私たち消費する国々の行動を促す。
動いたのは、社会起業家、ピープルポート社長の青山明弘さん。
これまでは捨てられてきたレアメタルを活用する事業を興した。企業などで使わなくなった中古パソコンを無償で引き取り、修理して販売。これまでに3000台以上のパソコンを販売してきた。
働いているのは、紛争や政治的な迫害などから逃れるために、難民申請をしているアフリカの人たち。難民申請中で労働許可を得ている人を正社員として雇用している。
事業の狙いは、難民申請者を支援すると同時に、コンゴでの採掘を減らすことに貢献すること。
すばらしい事業だ。
ここで働く難民スタッフはそのやりがいをこう語る。
「紛争で子どもが親を失うなど、一台のパソコンのためにひどい事が起きています。そうしたひどい事を少しでもなくすためにここで働けて幸せです」
再生パソコンは、新品の半額以下で販売され、これまで3000台以上売れたという。
青山社長は「自分がふだん選ぶプロダクトサービスの裏側って、どうなっているんだろう、どういうことにつながっているんだろうと思いをはせてほしいと強く思う。」という。
コンゴはまた、今後のEV化に必須のコバルトの世界最大の産出国で、シェア7割を占める。
電気自動車のバッテリーに使われるコバルトの需要は、2040年には今の6倍になると予測されているが、当面、コンゴに替わる産出国は見当たらない。コバルト鉱山では、児童労働や事故による死傷も問題になっている。
コバルトも再利用が求められているが、それに取り組むのがJX金属サーキュラーソリューションズで、使用済み蓄電池から独自の溶媒抽出法で高純度コバルトを回収、再び電池の材料にしている。
こうしたレアメタル再活用はとても有意義で、今後もちろん拡大していくべきだが、やはり現場の状況を規制し変えることが必要だ。
コンゴの鉱物問題に詳しい、東京大学の華山和代講師は規制の難しさを語る。
「コンゴ東部の鉱物産出地域では、鉱山の監視が徹底していないために、あいかわらず紛争に関わった鉱物が流通してしまっています。
サプライチェーンの上流には、規制の効果がまだ行き届いていないのが現状です。
リサイクルを増やすことによってコンゴの鉱山への依存度を下げるというのは、非常に貴重な取り組みの一つだと思います。
それだけではサプライチェーンの上流で起きている採掘問題というのは解決するにはいたらない。やはりもっと上流(産出地域)に取り組むというのは必要だと思います。」
鉱山の規制は、コンゴ政府と周辺国、欧米、協力機関と民間団体とで行う仕組みがあるのだが、コンゴ政府の運営能力の不足や汚職などのため、それがうまく機能していないという。
「現地での監視体制の強化にもっと人手と資金を割く必要がありますし、企業にはこの上流での取り組みを支援してほしいと思います。
コバルトはコンゴが世界の生産量の7割を占めているので、その代わりとなるような輸入元がありません。そのため、中国の業界団体も欧米と同様の規制順守に取り組んでいます。
ただし、将来的に中国企業がコンゴでのコバルト採掘権を、どんどん獲得していって、世界市場におけるコバルト供給の圧倒的優位を確保した場合は、それでもなお人権への配慮を続けるかどうかには懸念があると思います。」(華山和代講師)
脱炭素化にむけての努力が、かえって戦乱を長引かせ、人々に悲惨の種をまくとは・・。世界は複雑で濃密な関係によってできている。そのことを踏まえて、世の中の出来事を見ていきたい。