台湾取材時の昔話

 台湾で2日起きた列車脱線事故は死者50人、負傷者200人超というなんとも痛ましい結果になった。犠牲者のご冥福をお祈りします。

 事故が起きた花蓮県は思い出の場所だ。
 もう三昔も前(1980年代末)、私がフィリピン・マニラに駐在していたとき、台湾に取材に行き、花蓮に数日滞在したことがある。

 たしか、花蓮に残る植民地時代のなごりやかつて日本兵としてフィリピン戦線に投入された高砂族(先住民)などを取材した。当時はまだ、年配の高砂族の人たちの会話には「おばさん」などの日本語が日常語として使われていた。

 台湾滞在中は、困ったことがあるとすぐに助けてくれる人が現れて、台湾人の親切に感動した。

 バスで移動中、どこで降りたらいいかを聞こうと、前の座席の男性に声をかけた。年配だったので日本語を話せるだろうと思ったのだ。
 するとその男性は、紙に漢字を書いて意思疎通をしようとする。聾者だった。そしてその人は、自分が降りるべきバス停で降りずに、私の目的地まで一緒に行ってくれたのだった。そこまでしてくれる人がいるのか・・ジンときた。

 もう一つ、忘れられない思い出がある。
 ある下町で撮影していると、通りかかった高齢の男性が「日本人ですか」と話しかけてきた。ぜひ自宅でお茶をごちそうしたいという。取材が一段落したので、お邪魔することにした。
 応接間に通されると、立派なガラスケースが目に入った。軍服らしいものが飾ってある。
 帝国陸軍に所属していたときの軍服です、とその男性は、誇らしげに語った。さらに、「中共が台湾にやってくるくらいなら、日本にもう一度植民地にしてもらう方がはるかにいい」と言ったのだ。

 また、場所はどこか忘れたが、お茶の農業試験場を訪ねたとき、入り口に銅像が立っている。台湾の製茶業の基礎を創った日本人だという。台湾のお茶というと新井耕吉郎の名が挙がるから彼の銅像だったのかもしれない。

 その像を指して、責任者が「私たちの恩人です」とさらりと言ったのが印象に残った。これが同じ日本の植民地になった韓国だったら、そんな像は引き倒され、日本人が関与したことも触れないだろう。

 台湾って植民地時代を否定しないのか、と驚いたものだ。

 それからこんなことも。
 私は台湾取材に、マニラ支局の助手を同行させたのだが、高砂族取材中に「タカセさん、この人たち、タガログ語みたいな言葉を話しています!」という。一つ、二つとものの数え方はまったく同じ。タガログ語では豚を「バブイ」というが、それも同じ。「私たちは兄弟だ!」と現地の人たちと握手して喜んでいる。
 高砂族は、フィリピン、マレー半島インドネシアに住む人々と同じアウストロネシア語族なのだった。

 南から台湾に渡ってきたのかと私は思っていたが、どうやら台湾からフィリピンやマレー半島に広がっていったらしい。この子孫は西へ遠くマダガスカル、東へは南太平洋の島々へと移動していった。航海術にすぐれた人々だったのだろう。

 その後、台湾には二度取材に行ったが、毎回意外なおもしろい顔を見せてくれる。

 仕事をはなれて遊びに行ってみたい国である。(私は台湾は地域ではなく国家だと思っている)

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 節気はもう清明だ。

 台湾の事故にあったなかには、清明節で先祖のお墓参りに行く人も多かったと報じられていた。沖縄でも「清明祭」(シーミー)にはお墓で食べたり踊ったりするという。
万物が清らかでいきいきする時節だ。

 4月4日から初候、「玄鳥至」(つばめ、きたる)。次候「鴻雁北」(こうがん、かえる)が4月10日から。末候「虹始見」(にじ、はじめてあらわる)が4月15日から。
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 4月1日、男女二人組ロックユニットのGLIM SPANKYに関するニュースがあった。
 新曲「風は呼んでいる」を書き下ろし、2人の出身地である長野県のabn長野朝日放送開局30周年テーマソングに決定したという。さらに、これはabn『今ドキ!ゆうドキッ!』(月~金夕方4:32放送)オープニング曲としても使用される。2人は4月10日(土)にスタートするabn新番組『駅テレマルシェ』に生出演する。

 GLIM SPANKYは長野県の松川高校の文化祭から始まったそうで、地元にも認められて錦を飾ったわけだ。よかったね。

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きのう4日、NHKBSプレミアム「COVERS」に出演したGLIM SPANKY。スタジオでのトークでも、長野県の田舎出身であることを語っていた


 すっかりファンになってしまって、このごろは日に何度か松尾レミの歌声を聞かないと気が済まない。松尾レミの「咆哮」がクセになる。

 きょうのお薦めは、「吹き抜く風のように」

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♪どこにもない 縛られるものなどない
 宗教や戦争も僕にはないのさ
 転がる石のように 吹き抜く風のように
 ブレやしない 魂を握りしめている・・