「天皇も任命拒否ができるかも」

 きのう、横田めぐみさんは56歳の誕生日を迎えたが、早紀江さん(84)は記者会見で、《「めぐみは、北朝鮮のどこで、どんなふうに誕生日を迎えているんだろう。いつも主人とささやかなお誕生日をしていたんですけど、今年は本当に寂寥感というか、寂しい」と声を落とした。
 めぐみさんの誕生日には毎年、滋さんと小さなケーキとコーヒーでお祝いをしてきた。今は滋さんとめぐみさんの写真をくっつけてリビングの見える所に並べて置き、毎日お祈りし、めぐみさんの無事を願い、話し掛けているという
 北朝鮮外務省は先月、「拉致問題は不可逆的に完全無欠に解決された」とする声明を公表した。早紀江さんは「めぐみの偽の骨とか死亡通知書とか、みんなでたらめだったとはっきりしている。左右されない」と語気を強め、「早く日本で自由にさせてあげたい。北朝鮮という国を納得させて、みんなを帰してほしい」と国に求めた》(東京新聞

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 早紀江さんとともに私も祈ろう。

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 天皇も任命拒否ができるかも

 今朝の「朝日川柳」の入選句(東京都 奥津春美)だが、私も同じことを考えた。

 政府が日本学術会議の新会員候補のうち6人を任命しなかった問題
 これは、菅内閣の姿勢が問われる重大問題だ。

 6人を任命しなかったと聞いてすぐに思い浮かべたのが、憲法6条だった。
 
 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する

 天皇が任命しないということは許されない。この場合の「任命」は形式的な行為にすぎないからだ。
 問題は、学術会議から推薦された人を菅総理が任命しなくてよいのかだ。

 日本学術会議は、理系から文系まで日本の全分野の科学者を代表する機関として、戦後間もない1949年に発足した。
 会員は210人(1部=人文・社会科学、2部=生命科学、3部=理学・工学それぞれ70人づつ)、任期は6年で、3年ごとに半数が交代する。

 現会長は、ニュートリノ研究で2015年にノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章博士。

 会員は、当初は研究者による選挙で選ばれていたそうだ。次第に選挙に出る人が減って84年から学会の方針を基にして学術会議が候補者を推薦する方式になったという。
 日本学術会議法では、学術会議は「内閣総理大臣の所管」で、「独立して職務を行う」とされる。

 第7条2項には「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とある。
 第17条「日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする」

 第7条2項の「任命」はどういう意味なのか。

 これについては、1983年、学術会議法が改正される際に国会で当時の中曽根康弘首相が、「政府が行うのは形式的任命にすぎません」(83年5月12日、参院文教委員会)と答弁。丹羽兵助総理府総務長官(当時)も「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない、そのとおりの形だけの任命をしていく」(83年11月24日、参院文教委員会)と答えている。

 これが政府の法解釈であり、推薦された人を任命する行為は形式的なものにすぎない、つまり総理大臣は推薦された人を自動的に任命しなければならない。争う余地がないほど明快である。

 ところが政府は今日、行政権や公務員任命権を定めた憲法の条文を根拠として、首相が学術会議の推薦通りに任命する義務はないと確認した2018年11月の内部文書というものを公表した。
 内閣府日本学術会議事務局が作成したとされるその文書は、首相が推薦通りに会員を任命する義務があるかを検討したものだという。
 そこには「首相に学術会議の推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない」と記されてある。
 
 従来の法解釈を明らかに変更するこんな文書をずっと公表せずに、今ごろ「実は・・」と出してくるとは卑劣きわまりない。
 しかも、なぜ公表しなかったかについて加藤勝信官房長官は「解釈に変更を加えたものではないので、直ちに公表する必要はなかった」と笑止千万の答え。

 菅首相は、何を聞かれても「まったく問題ない」と官房長官時代と同様、木で鼻をくくった答え。

 任命拒否された6人は、安倍政権で成立した安全保障法制や「共謀罪」法に反対の意思表示をしており、菅首相がお上に逆らうものを排除したことが見え見えだ。
 露骨に敵味方に分けて差別し、かってに解釈変更をしておきながら説明責任を果たさない。不誠実で陰湿な体質も安倍政権を継承している。


 学術会議は「優れた研究又は業績がある科学者」を独自の選出基準で選んでおり、百歩譲って「首相に学術会議の推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない」としても、拒否した判断基準を示すのは最低限の説明責任だ。それを示さなければ、恣意的な判断になる。

    国会で徹底的に追及すべし。

 菅首相の母校、法政大学の田中優子総長が「日本学術会議会員任命拒否に関して」というすばらしいメッセージを発表した菅首相の姑息な仕打ちに一歩も引かないとの決意を語る、毅然とした檄文である。
 こうした見識のある肝のすわった知識人は社会の宝だ。

www.hosei.ac.jp


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 きのうNHKの「ニュースウォッチ9」にアルパインクライマー・山岳カメラマンの平出和也さん中島健郎さんが出演。2020 ピオレドール賞を受賞した喜びを語った。

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 ピオレドール賞とは、優秀な登山家に贈られる賞で「登山界のアカデミー賞」とも呼ばれる、1991 年に創設されたフランスの山岳賞。

 2019年7月2日に、パキスタンカラコルムに位置するラカポシ 7788m 未踏の南壁より新ルートにて登頂。その功績を称えられての受賞だった。

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平出さんは禅僧のような風貌になっていた。話も哲学的。やらなくていい理由を探すのではなく、「やりたいという理由を探すほうを僕は選択したい」と。

 お二人とも、ジン・ネットの番組の撮影をお願いしたご縁がある。ドローンまで使って動画を撮影しながら未踏ルートを登っていくのはすごい。

 二人はこれからも未踏峰、未踏ルートに挑戦するという。

 平出和也さんは3 度目、中島健郎さんは 2 度目の受賞となり、3度の受賞は日本人初。おめでとうございます!
 日本の沈滞した空気のなか、さわやかなニュースでした。