香港の若者は「暴徒」なのか2

 超大型の台風19号がやってくる。15号で大きな被害を受けた千葉県の人たちが心配だ。家の屋根をブルーシートで覆っただけの人々は、さらに強い雨風が襲うと聞いて、不安でいてもたってもいられないだろう。「一人暮らしは心細い」と泣く女性の高齢者をニュースで観て、何とか被害が小さくなるよう祈らずにはいられない。

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スーパーのレジは長蛇の列だった

 きょう早めに帰って、スーパーに寄ったら、飲食品を買いだめする人で見たことのない混みようだった。ペットボトルの水は売り切れ。帰宅して窓ガラスにガムテープをバッテンに貼り、自転車をフェンスに縛り付け、物干し竿を室内に取り込んだりした。東北出身者は台風被害に慣れていないので心配である。
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 シリア北部クルド人支配地にトルコが攻撃をかけている。
 《トルコ軍はテロ組織とみなすクルド人主体の武装勢力シリア民主軍(SDF)」に対する攻撃を10日も継続した。トルコはトランプ米大統領がシリアからの米軍撤退を表明した後、シリア北東部での攻撃を開始。前日の空爆と地上戦開始に続く攻撃で、戦闘員だけでなく民間人の死者も出ており、多くの住民がこの地域からの避難を迫られている。》。
 IS掃討の最大の功労者であるクルド勢力を見捨てていいのかという、民主、共和両党からの声に対して、トランプ大統領は「彼らは第2次大戦で我々を支援しなかった。例えばノルマンディーで我々を助けてくれなかった」と言い放った。中東における最低限の秩序維持ももはや米国には期待できない。すでに多くの避難民が出ている。日本政府もトルコ政府を牽制するなどしてこれ以上の悲劇を食い止めるべきだ。
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 昨日の続き。
 10月5日、緊急法発動による「覆面禁止法」が施行された。デモや集会では、身元がばれないよう、マスクをする参加者が多いが、これを禁止するものだ。この日、いくつかの地区でデモが行われた。ネットメディアのライブ放送を便りにデモをやっている場所を知ることができる。それを頼りに探すと深水埗(サムスイポ)地区のデモ隊に遭遇した。「覆面禁止法」施行後はじめてのデモ(の一つ)である。
 ほとんどが若者で、ほぼ全員がマスクをつけている。抗議の意思を示すためだという。きょうたくさんマスクを買ったという人もいた。10月1日の国慶節前からほとんどのデモ、集会が「違法」扱い。最近はデモが「ゲリラ」化しており、直前までどこでやるかが分からない。神出鬼没で警察も取締りに動きにくい。
 デモ隊は小さなグラウンドのある運動場に入り、集会が始まった。6月以降の警察による暴力で負傷した人に黙祷を捧げ、手のひらを空に向けた。5本の指で「5大要求」を示している。人数はおよそ500人で夜7時半ごろ解散した。

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「5大要求は一つも欠けてはならない」と主張

 帰った人もいたが、多くはそのまま残り、カップルでダべったり、グループでスマホを見たりしている。どうやら何かを待っているようすだ。
 8時過ぎ、黒ずくめの若者数人がグラウンドの中央に集まって相談を始めた。カメラを持って近づくと、メデァアは近づくなと制止された。「作戦会議」らしい。そのうち、他の参加者も集まってきて50人以上の輪になった。

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テニスコートの中央で「作戦会議」。右下の黄色いベストの集団はメディアで、作戦会議には近づかない。

 集団が動き出したのでカメラマンと追いかける。旺角(モンコック)警察署の前の交差点に差し掛かるとバリケードで道路を遮断し始めた。そのまま目抜き通りのネイザン通りを南下して交差点ごとに交通を遮断する。工事現場の木材やゴミ箱など手当たり次第に道路に引きずりだしてバリケードを作っていく。彼らこそ「勇武派」と呼ばれる集団なのだった。

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ゴミ箱など手当たり次第に道路に並べて「バリケード」を作る

 1キロ近い大通りが車が通らない歩行者天国のようになると、市民らが通りに出て、北に向かって行進を始めた。「勇武派」の行動が引き金になって、夜の大デモが出現したのである。沿道の市民らもスローガンを唱和しながら移動していく。
 このように、「勇武派」と「和理非派」は、画然と区別される存在ではなく、いわば役割分担して政府への抗議活動が展開されていることがわかる。
 デモは旺角警察署の交差点で、警察への非難の声を上げはじめた。警察署のスピーカーからは甲高い女性の声で「解散しなさい」との警告が大音響で流れ、上階の警官らが銃を構える。しばらくすると機動隊が到着してにらみ合いになった。
 沿道の市民が機動隊に激しく罵る。機動隊の隊長らしき男が市民の一人を指さすと数人の隊員が駆け寄って有無を言わさずに地面にねじ伏せ連行する。そのたびに大きな抗議の声が沿道から上がる。
 この日は火炎瓶や催涙弾が登場することなく、機動隊が数名を連行し、バリケードを撤去して去っていった。

 香港中文大学の世論調査では、「警察はデモ隊に対して過剰に暴力をしていると思うか?」については「とてもそう思う / そう思う」が合わせて71.7%だったのに対し「デモ隊の暴力は過剰か?」という質問には「とてもそう思う / そう思う」が合わせて39.4%だった。6割はデモ隊の「暴力」を容認している。
 そもそもデモ隊はなぜ「暴力」を使うようになったのか。
(つづく)