「弁士中止!」ふたたび

 8月1日(金)、冒険家の阿部雅龍さんに会った。場所は東京都港区立エコプラザ。ここで1日から15日まで「冒険家の見た南極の環境展」の展示がある。阿部さん自ら展示の設営をしていた。以下、エコプラザのHPより。

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 《冒険家、阿部雅龍(まさたつ)さんは、これまで3度の北極探検に加え、11,000kmに及ぶ南米自転車縦断、北米大陸のロッキー山脈縦貫トレイル5,400km踏破、アマゾン川いかだ下り2,000km、そして、南極大陸では、「メスナールート」と呼ばれる日本人未踏破ルートを踏破して、南極点到達を達成しました。地球環境の危機が叫ばれている今日、北極の氷山の崩壊は地球温暖化バロメーターにもなっています。果たして今、極地では何が起こっているのでしょうか。極地の厳しい自然環境や、世界の環境保全への取り組みについて、冒険家の足跡と共に、写真とパネルで紹介します。また、極地で食料品や各種道具を運ぶために使用した「ソリ」や「極地ウエアー」も展示します。実物の「ソリ」に是非、触れてみてください。》

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 阿部さんは自称「夢を追う男」で、人力車夫である。今年1月16日、南極点まで917.7キロを単独で歩き通した。今年の冬は、白瀬矗(のぶ)中尉と同じルートで南極点到達をめざす。昼ご飯を食べながら、白瀬さんができなかった南極点到達を、彼のルートで実現したいと熱く語ってくれた。しかし、それは山越えの必要な非常に危険な難ルートで周囲はみな心配しているという。
 阿部さんは秋田県人で、白瀬中尉は同郷。子どものころからあこがれていたそうだ。阿部さんと共通の友人、登山家で写真家の小松由佳さん(一昨年NNNドキュメントで番組を制作https://takase.hatenablog.jp/entry/20170919)やフォトジャーナリストの高橋智史さん(カンボジアを取材して土門拳賞を受賞https://takase.hatenablog.jp/entry/2019/03/29/)が秋田出身。こう並ぶと、信念をまげずに一途に走り続ける人ばかりだ。すごいな秋田人。
    いま阿部さんは南極行きのための費用1億円を集めている。浅草で人力車を引いているのでよかったら乗ってやってください。
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 こんな暴挙が許されるのか。
 「あいちトリエンナーレ」の展示が急遽中止に追い込まれた
 《愛知県内で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)の実行委員会は3日、企画展「表現の不自由展・その後」の中止を決めた。慰安婦を表現した少女像など、各地の美術館から撤去されるなどした二十数点を展示しているが、抗議の電話が殺到するなどしていた。(略)
 津田氏によると、少女像をめぐって、抗議する電話が開幕した今月1日だけで約200件あった。テロ予告や脅迫と取れるもの、職員の名前を聞き出してネットに書き込むような事例もあり、「対応する職員が精神的に疲弊している」と説明していた。
 一方、河村たかし名古屋市長が2日、トリエンナーレ実行委員会会長である大村秀章・愛知県知事に対し、展示中止を含めた適切な対応を求める抗議文を提出。「日本国民の心を踏みにじる行為」などと主張し、津田氏らが対応を検討していた。
    津田氏は2日に開いた記者会見で、企画展について「表現の自由が相当制限されてきた公共施設で、行政と作家が協議し、自己規制や検閲なしに展示できる実例を示したかった」と説明していた。》(朝日)

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 演説中に「弁士中止!」と強制的にやめさせた言論弾圧の時代を彷彿とさせるではないか。
 朝日新聞は1面トップで報じ、2面は全面で解説、社会面にも記事を載せて、この事件の重要性を強調した。
 目についたツイートから。
 ロバート・キャンベル
 《不自由展なら唾棄すべき内容だと言う人も共感する人も声高に議論すればいい。手続きに不正がなかったか検証するも良し。しかしそれを経ずに首長が唐突に中止を求め誰かが「撤収しなければガソリン」と脅迫し挙句に止むを得ず中止とするのは自由な議論を奪う流れ、とても残念だ》https://twitter.com/rcampbelltokyo/status/1157672384935018496


 内田樹
 《ふだん隠蔽されている社会の暗部を可視化するのはすぐれて批評的な行為です。今回の愛知の出来事で、日本の暗部が深くかつ広範囲に可視化されました。嫌な話ですけれど、日本の暗部がこうして白日の下に晒されて、僕たちの住んでいる社会の実相を開示されたのは批評の手柄だと思います。》https://twitter.com/levinassien/status/1157829218031435777


 中野晃氏
 《中止判断に至った経緯は不明ですが、主催者にとって一番きついのは警察に「このままでは安全を保証できない」って言われることでは。市長や官房長官が、右翼に騒ぐようゴーサイン出して、警察にハシゴを外させる。警察が恣意的に暴力を許容し、自由の範囲を狭めるとしたらファシズムそのもの。真相は?》
https://twitter.com/buu34/status/1157897633664364545


 脅迫があるならば、警察が実力で展示会を守るというのが民主国家のあり方ではないのか。潰す側は、組織的な脅迫でイベントを中止させることができるという成功例になっただろうが、こんなことを続かせてはならない。