周庭「暴徒はいません。あるのは暴政だけです」

 香港の逃亡犯条例改正案をめぐる問題で、1日、デモ隊の一部が立法会庁舎のガラスを割ってなだれ込み、約3時間にわたり占拠。設備を壊すなどした他、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の辞任や、改正案の撤回を要求する落書きなどもしたという。
 これに対して日本では一斉に批判の声が上がった。いくらなんでも暴力はいけない、市民の支持を失い運動が先細りする、当局による弾圧や中国の介入の口実を与えるなどと。
 “民主の女神”周庭(アグネス・チョウ)さんはどう言っているのかと興味があった。
 きのうのツイートで、彼女は「暴徒」とされたデモ隊を完全に支持し、応援している。https://twitter.com/chowtingagnes

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 周庭さんの連続ツイートはまず、順を追ってなぜこのような行動に出ざるを得なかったのかを説明する。
「1. この一ヶ月は、香港人にとって長い一ヶ月でした。香港人は署名運動を行い、新聞広告を掲載し、100万人、200万人のデモを行い、私たちの民主と正義に対する強い意志を示し、全ての手を尽くしました。志を同じくする人3名は、自死によって政権による民意の無視に抗議することさえしたのです。」
「2. 昨日のデモに参加した人たちは、皆香港を強く愛し、制度の改革を実現したいと願う香港人です。立法会への突入によって訴えるという手段に出たのは、過去一ヶ月、過去10年、20年にわたって、香港政府と中国共産党政権が香港市民の願いと、私たちの民主に対する訴えを全く尊重しなかったためです。」
「3.香港 政府は繰り返し「暴力」との言葉で昨日のデモを形容しています。しかし、香港政府には暴力を譴責する資格は全くありません。6月12日、邪悪な警察が、全く正当性のない暴力行為を、武器を持たない群衆や、記者に対しても行ったことは、全世界が目にしたところです。」

 ついで「暴徒」とされた仲間の行動が抑制されたものだったことを揚げて擁護する。
 「彼らはただやりたい放題に立法会を壊したのではないのです。彼らは立法会の歴史的な文物や、図書館には「壊さないで」との張り紙をし、立法会のレストランには「私たちは泥棒ではない、万引きはしない」と書いて、飲み物を飲んだら代金を置いていったのです。真の「暴徒」であれば、文物を保護などするでしょうか。過酷な環境の中で、これほどの理性を保てるでしょうか。」

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 そして、「暴徒」と批判するであろう我々読者に、「暴力」とは何かと問いかける。デモ隊の暴力にではなく、権力側の構造的で巨大な暴力にこそ目をむけよという。
 「過去二十年、香港人は全ての方法を尽くしました。一度、また一度と、あきらめずに訴えてきました。しかし、政府はこれを聞いたり、尊重したりしたことがありません。
 たとえ三人の若者が自殺しても、政府はこれに反応を示しません。一言の反応もないのです。多くの若者にとって、これは香港の最後の重大な局面です。彼らは自分の命を賭けてまで、真の民主と正義を得たいと考えています。あなたはこのようなデモのやり方に賛同しなくても結構です。」
 「しかし、若者をここまで追い詰め、彼らを死によって訴える行為にまで駆り立てているのは、この恥知らずの殺人政権なのです。」
 恥知らずの殺人政権・・・この言葉の激烈さはどうだ。
 「暴徒はいません。あるのは暴政だけです」
 「巨大な権力と巨額の財政を手にした政府は、強大な国家のマシーンを使って人々の体を傷つけ、人々の意志を抑えつけます。(略)彼らは香港の制度と価値、さらに若者の命を破壊しているのです。」
 これに比べれば、デモ隊の「暴力」など何でもないというわけだ。
 そして結論 
 「9. 私たち香港人は、昨日の出来事を経て、香港人であることをさらに誇りに思っています。今後も、私たちは勇気と、誠実さと、愛を持って、香港のために戦います。」

 

 恥ずかしながら、周庭さんたちが持つ憤りの巨大さに驚いた。一つには私自身の香港情勢と人々の心情についての無知にもよるだろう。
 「命をかけて闘っています」という彼女たちの言葉の本気度に気圧される思いがする。もっと香港のことを知らなければ。
 しかし、あらためて、香港の若者すごいな。