香港 今回の運動の成功は団結と速度(チャン・ジーウン監督)

 オフィスのある神田小川町の交差点。ヤマボウシが白い花をつけた。 

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 香港が気になって仕方がない。
 「雨傘運動」を描いたドキュメンタリー映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』が緊急再1上映となったので、何とか時間を作って観に行く。
 2014年、大学生が中心になって「真の普通選挙」を求めデモ・集会を行なった。警官隊の催涙弾を雨傘で防いだことから雨傘運動と呼ばれるようになった。学生たちはテント村まで作って香港の中心街の路上を占拠したが、政治を動かすことができないまま占拠だけがつづく事態に市民からの批判も起き、最後は警察による排除で79日間の運動が終焉した。真の民主選挙は実現せず、民意が反映しない形で政府も立法会も選ばれることになってしまった。
 映画は運動の始まりから挫折までを追う。ごく普通のノンポリ青年がデモに参加し、街中が人波で埋まるのを見て「ほんとにこれが香港なの?」と驚き、仲間と一緒に活動に目覚めていく。彼らの表情が実に生き生きしている。映画の最後は、志を曲げないであろう20年後の自分を語るのだが、運動は挫折しても心は前を向いている。
 上映後、会場(ポレポレ坐)と香港のチャン・ジーウン監督とをスカイプで結んだトークセッションがあった。

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伯川星矢さん(左)とチャン監督(右)

 会場から、「雨傘運動と今回の運動の違いは?」との質問。
チャン監督:
 「雨傘運動では、一つは運動の進め方をめぐっていろいろ対立が起きた。次に、中心地の路上を占拠したことに酔いすぎた、香港人はここまでできるんだという思いに酔ってしまって通りを占拠することが自己目的化した。
 今回の違いの一つは団結。いろんなやり方の違いが共存できた。こっちはデモやってて、あっちはまた小グループで別のことやってたりしても団結できた。
 二つ目は全てが速かった。雨傘のときは同じ場所を79日間占拠することに酔ったが、今回は政府に期限を設けて、何日までにこれをせよと、そういうスピード感があった。それが今回の教訓です」。
 雨傘運動が挫折した後、香港には「無力感」が漂っているなどと言われたが、しかし一度刻まれた運動の経験は今回に蘇ったのだろう。
 会場で監督と受け答えするのは、伯川(はくがわ)星矢さんという香港生まれの人で、素晴らしい通訳兼MCぶりだった。冒頭、自らの建設作業員のような出で立ちを説明。
 6月12日、香港警察がデモ隊を強制排除したさい、記者が威嚇発砲されたり棍棒で殴られるなどの被害をこうむった。デモ参加者の頭部や眼部を狙ってゴム弾を発射したとも言われ、こうした警察の暴力に抗議するため、記者たちはヘルメット、ゴーグル、反射服を着用して警察の記者会見に出席した。
https://www.excite.co.jp/news/article/EpochTimes_43789/
 伯川さんはそのコスプレで現れたというわけだ。
 伯川さんからのメッセージ
 「日本人に何か行動してください、というのではない。みなさんに知ってほしいというのが上映会含めての趣旨。そして、ツイッターなどで発信すれば香港に注目しているんだよということが分かる。それだけでも(香港人にとって)大きな力になる」。
 もっといろいろ勉強しよう。