忖度を強いた安倍氏

 きのう、今日と冷たい雨が降る。きょうは春分の日というのに、東京の最高気温は7度に届かなかったという。
 仕事の打合せに代々木公園へ。
 地下鉄の駅から地上に出ると、目の高さに桜の花が見える。幹にくっつくように咲いている。しばらく歩くと、馬酔木が濡れて咲いていた。

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 佐川氏の国会への喚問が決まったが、政府は、佐川氏が勝手に「忖度」したことにして問題をおしまいにしようとするだろう。ジャーナリストの武田徹氏は、安倍首相の同じような過去の所業を見ておくべしとして、内閣官房副長官だった安倍氏が、放送前のNHKのドキュメンタリー番組に政治的圧力をかけて放送内容を改ざんさせた「NHK番組改変問題」を挙げている。これをみると、忖度とは自由意志で行なわれる場合だけでなく、圧力によって忖度を強いる手法もあることが分かる。
 問題の番組は、2001年1月30日に放送された「ETV2001」の『問われる戦時性暴力』。放送直前、NHKの放送総局長らが安倍氏らに呼びつけられ、番組内容が急遽大幅に変えられてしまった。
財務省にも同じ手法を? 安倍首相が17年前、NHKに「忖度による改ざん」をやらせたときの狡猾な手口』http://lite-ra.com/2018/03/post-3870.html
《(略)このとき番組に圧力をかけた国会議員というのが、当時の官房副長官だった安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相であったことを、番組放送から約4年後の2005年1月12日、朝日新聞がスクープとして朝刊一面で大きく報じたのだ。さらに、朝日のスクープの翌日には、問題の番組の担当デスクで、当時、NHKの現役チーフプロデューサーだった長井暁氏が異例の記者会見を開き、涙を浮かべながら「4年間、悩んできたが、事実を述べる義務があると決断した」と語り、放送総局長らが安倍・中川議員に呼び出されたと認識していること、「政治介入が恒常化している」ことを告発した。
 しかも、朝日は安倍らが圧力をかけたことを裏付ける証言をNHK放送総局長から得ていた。圧力をかけられた放送総局長自身が安倍・中川両氏との面会時のようすを仔細に語っており、その録音テープも残されていた。このテープは後にジャーナリストの魚住昭氏が「月刊現代」(講談社)で明らかにしているのだが、そこには、放送総局長が安倍について語ったこんなセリフが出てくる。
 「(安倍)先生はなかなか頭がいい。抽象的な言い方で人を攻めてきて、いやな奴だなあと思った要素があった。ストレートに言わない要素が一方であった。「勘ぐれ、お前」みたいな言い方をした部分もある」
 「勘ぐれ、お前」──。安倍がNHK放送総局長に語ったというこの言葉は、まさに「忖度」を促す言葉ではないか。
 この安倍の忖度圧力は裁判でも事実認定されている。NHK番組改変問題は、同番組の取材を受けた市民団体が NHKを相手取って訴訟を起こしているのだが、その控訴審判決文ではこんな事実認定が書かれているのだ。
 「制作に携わる者の方針を離れて、国会議員などの発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度し、当たり障りのないよう番組を改変した」
 いずれにしても、安倍首相が、この頃から政治権力を盾に「忖度」を促す言葉で圧力をかけ、いろんなものを捻じ曲げていたことは間違いない。そして、こうした手法が、後の加計学園問題における「総理のご意向」という言葉を生み出し、森友決裁文書改ざんでは、当時の佐川理財局長に犯罪をはたらかせたということなのだろう。(以下略)》
 安倍という人は、こういう手法が「体質」となっているのかもしれない。
 佐川氏は喚問されても、「刑事訴追の可能性がある」として詳細を語らないだろうというのが大方の見方のようだ。だが、NHK長井暁氏のように、「事実を述べる義務があると決断した」と立ち上がってくれないかなと夢想している。