つづく亡命ロシア人の不審死

 近所のモクレンも咲いた。最高気温20度を超える暖かい日が続いて、桜も開花が早まっているという。春分も近い。
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 トランプ大統領がまた政権幹部をクビにした。しかもツイッターで。ティラーソン国務長官にトランプが電話したのはそのあとだったという。米国の国務長官というのは外務大臣。こういうとんでもないことを連発するトランプだが、支持率が4割あるというのは驚きだ。対北朝鮮外交をアドバイスできるスタッフも不在のまま、金正恩との首脳会談に臨んだら、どんな合意をするのか、怖くなる。

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 ロシアの大統領選挙を控え、英国が駐英ロシア大使館員の外交官の4割にあたる23人を国外追放し、冷戦後最大規模の報復措置に乗り出した。これに対しロシアも報復措置を発動するとしている。
 3月4日、英国南部のソールズベリーで、ロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏とその娘が意識不明の状態で発見された。身体は痙攣し、明らかに異常だったという。その場に居合わせ、2人を助けようとした警察官もたちまち容態が悪化し、重体となった。メイ首相は3月12日、下院で、この事件で用いられたのは軍事兵器レベルの神経剤「ノビチョク」で、かつてロシアが製造していたものだと明かした。かなりの確率でこの事件にはロシアが絡んでいるとして、「イギリスに対する無差別で無謀な攻撃だ」とロシアを非難した。
 さらに、プーチン大統領を批判するロシア人亡命者ニコライ・グルシュコフ氏が、ロンドンの自宅で不審死を遂げたと13日に報じられた。
 私は「プーチン王朝誕生の闇」を番組化したさい、ロンドンで、2006年に暗殺されたロシアの元情報将校アレクサンドル・リトビネンコ氏の妻を取材した。リトビネンコ氏は、ロンドンのホテルで茶に入れられた放射性物質ポロニウム210の被曝で死亡していた。暗殺事件から2年経っての取材だったにもかかわらず、彼らの元の家はまだ放射性物質が除染されずに封鎖され、ドアにドクロマークが貼ってあった。プーチンは謀略で権力にのぼりつめ、その過程で数えきれない人々を殺している。現代史でも、もっとも「汚い」権力者だと私は思う。過去のブログを参照されたい。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080725

 化学兵器放射性物質を使用すればロシアと分かってしまうのに、なぜ交通事故に見せかけるとか、怪しまれにくい手段を使わないのかと不思議に思う人もいるだろう。しかし、むしろロシアがやったということを示すことで、他の亡命者や反体制活動家、ひいては国民全体に恐怖感を与えることを狙っていると考えられる。おれに逆らうとどうなるか、わかってるんだろうな、と。これこそ恐怖=terrorによる支配を狙う、言葉の真の意味での「テロ」である。北朝鮮による金正男暗殺も同様だ。あんな異様なやり方で暗殺するのは北朝鮮しかない。日本の近くにテロ国家がある。プーチンの支持率が8割超というのも怖い。
 英国がロシアに正面から抗議して対抗するのには感心する。一方、わが安倍首相は、必死にプーチンのご機嫌をとって、関係の良さをアピールしていた。それなのに13日、色丹島に米国企業がディーゼル発電所を建設する計画があるとの発表が。外交の安倍、ではなかったのか。
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 14日、平昌パラリンピックで、私の注目していた新田佳浩選手(37)(日立ソリューションズ)が、ノルディックスキー距離男子スプリント・クラシカル立位(1・5キロ)で、銀メダルをとった。新田選手は、1998年長野大会から6大会連続出場。
 新田選手は、2002年ソルトレーク大会で銅メダル(クロスカントリー)、2010年バンクーバー大会で、金メダル2個(クロスカントリー)の活躍をした日本選手団の主将格(バンクーバーでは実際に主将だった)。
 1995年の全国中学生スキー大会に岡山君代表として出たことから、現ノルディックスキー監督の荒井秀樹氏に「将来ぜひパラリンピック日本代表選手に」と誘われた。新田選手は3歳のころ、おじいさんが作業していた農機具に巻き込まれて左前腕部を失い、おじいさんはずっと責任を感じながら生きてきた。そのおじいさんに金メダルを掛けてあげたいと頑張り続けた新田選手は、実際にその夢を実現させた。
 新田選手は、2014年ソチ大会を最後に引退しようと決めていた。ところが、金メダルの期待がかかっていたのに4位に終わる。おじいさんは2年前に亡くなっていた。新田選手は、これでは納得できないと引退を取りやめ、平昌大会に挑戦する。こんどは「自分のために金をとる」と宣言していた。2位でゴールしたあと大声で叫んで悔しがったが、奥さん、二人のお子さんの前でのメダル獲得は思い出になるだろう。おめでとうございます。