順調に問題だらけ

 明日朝、関東は雨を伴う強風だそうだ。気温が上がって春一番が吹くかもしれないという。厳しい寒さもそろそろ終わりだ。
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 今日も、明日も、明後日も、順調に問題だらけ。これからも、新たな苦労が次々に生れてくるでしょう。
 これは、北海道の浦河で精神障碍者たちの支援にあたる元看護師の向谷地(むかいやち)悦子さんの言葉だ。問題が出ても動じないのは、彼らと、苦労や弱さを取り除くのではなく共有し、「大切な苦労」の主役となって、自分で自分を助ける手だても講じられるようになったからだという。(『行き詰まりの先にあるもの』より、「折々のことば」朝日新聞2月7日)
 
 つらいことに直面したとき、自分などが想像できないほどつらい体験をくぐり抜けてきた人の言葉から学ぶことは多い。
 以前このブログで紹介した鴫原(しぎはら)良友さん。3.11後の原発事故で行政や東電から翻弄された福島県飯舘村の中でも最も放射線量の高い「帰還困難区域」長泥(ながどろ)地区の区長である。住民は土地も仕事も失い、家族は離散し、高齢者は仮説住宅に引きこもって精神を病むという状態に陥り、鴫原さんは住民と行政の間に入って、何度も死にたくなるような苦しみを味わってきた。
 鴫原さんは私たちに生きる姿勢をこう語った。
《「忙しくてどうしようもない」「金がなくて困った」「仕事がうまくいかない」、こういうのが最高の幸せですよ。毎日、働いて生きるのがいいのです。みなさん、今の暮らしを大事にしてください。》
 さらに、
《辛いこと、嫌なことがやってくると、「それきた」と喜ぶようにしている。これも試練だろうと前向きに考える。》という。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120713

 つらいことを前向きに「試練」と捉えるのは、非常に有効な心の持ちようだろう。
 さらに根本的な心の戦略として、深い絶対肯定感を持つということがあると思う。
 例えば、拉致被害者横田めぐみさんの母親、早紀江さんの場合は、「神のはからい」である
 早紀江さんは、北朝鮮に拉致されるという、めぐみさんの運命に、「神は大きな意味をこめている」と考えている。深い意味では「世界はありのままでよい」ということになる。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080509
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20130509

 「神のはからい」というとキリスト者独特のコスモロジーで、一見ついていけない感じだが、これは仏教でいう「覚り」に通じる心の持ちようだと思う。
 この世には不幸も悲劇も悲しみもあっていい。私たちが苦悩したり、絶望したりする。その苦しみの中に、悲劇の中に、絶望の中にコスモス(宇宙)の働きが隠れている。それに気づかないとひたすら大変なことのように思うが、気づくとそれでいいということになる。こういう視点からすると、幸福も不幸も、気づくとすべて宇宙の遊び「遊戯(ゆげ)」なのだ、と。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100719
 大きな問題に直面して泣いてもいい、悲しんでも悩んでもいい、ただそれは宇宙が自分を通して遊んでいるのだ。私個人は、こういう心の持ち方を学んで、とても人生が生きやすくなっている