金与正劇場から目を覚ませ

takase222018-02-27

 10年日記をつけている。2年前の今ごろ、その前の年に増えたメダカを近くの小川に放しに行ったとの記載がある。今年は寒くて、メダカの鉢はベランダに放置したまま。メダカたちがこの冬を越せたのかも分からない。今シーズンの冬は、やはり異常に寒いようだ。
 きょうの「報道ステーション」で、寒波の原因として北極の氷が少なくなっているという分析を紹介していた。「三重大学の立花義裕教授の発表によると北極の氷が溶け、北からの冷たい空気が流れて今年のような大寒波になったとされている」。やはり地球温暖化=気候変動のせいだったか。
 「温暖化」というと、地球全体がぽかぽか、じんわりあったかくなるというイメージを持って「いいじゃないか」と思う人もいるが、実際は大気や海流のルートを変えたり、地球環境のバランスを崩し、大洪水と大干ばつが交互にきたり、破壊的な結果をもたらすという。それなのに日本政府は気候変動(温暖化)にかんするまともな政策を提示していない。立憲民主党の綱領には「私たちは、気候変動をはじめとする地球環境問題と向き合い、新たなライフスタイルを確立し、持続可能な社会を実現します」と書いてあるが、早く政策化してほしい。
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 報ステではまた、シリア情勢を取り上げていた。
 《シリアの首都ダマスカス近郊の「東グータ地区」では、アサド政権軍による激しい爆撃が連日続いている。反政府派の支配地域があるため、2013年からアサド政権軍の包囲が続く東グータ地区。およそ40万人の市民が暮らし、深刻な食糧不足も起こっている。国境なき医師団によれば、18日からの7日間で死者は630人以上、負傷者は3300人以上にのぼるという。さらにアサド政権軍が塩素ガスを使用した疑いも浮上している。国連安保理は24日に30日間の停戦を求める決議を採択したが、攻撃はその後も続いている。アサド政権と後ろ盾のロシアは民間人を避難させるため、一日5時間限定の「人道的戦闘中断」を日本時間のきょう午後4時から開始。しかし、国連人道問題調整事務所の広報官は、戦闘が続いていて避難できる状況にないとしている。》
 アサド政権軍による爆撃直後のホワイトヘルメッツという民間救急隊の映像を流していたが、隊員が撮ったものだ。現場感がリアルに分かるので、ご覧ください。
https://www.facebook.com/SyriaCivilDef/?hc_ref=ARTmnT_Hg6apZV4T3JPbsCBtRnQor9YjPbyYaox6QTUcV2sYCG-yjPwnSnzlhaMw_Rk&fref=nf
 ここまではよかったのだが、コメンテーターの後藤謙次氏が、こうなったのはISが衰退して力の空白ができ、そこに内外のいろんな勢力が入ってきて勢力争いになっているからだ・・という意味の解説をした。諸勢力間の関係が複雑になっていることと、以前から一貫して住民虐殺を行なっているのがアサド政権であることは別問題である。「どっちもどっち」はやめましょう。
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 朝鮮半島情勢をめぐっても「どっちもどっち」論が目につくようになった。北朝鮮アメリカもどっちもどっち、だと。
 フランク・ブルーニというアメリカの著名コラムニストによる「『北朝鮮のイバンカ』?金与正劇場から目を覚ませ」に同感。抜粋して紹介したい。
 平昌オリンピックを機に訪韓した金正恩の妹、金与正(きむ・よじょん)氏に関する報道がずらりと並んだ。
 《だが、普通の国の良心的な使節だと思い込ませようと企てる北朝鮮のずうずうしさにあきれ果てたというような記事はあまりにも少なかった。まるで楽しんでいるかのように、北朝鮮側の策略に驚嘆する報道ばかりが目に付いた。
 金正恩氏の妹で、朝鮮戦争後、一族で初めて訪韓した金与正氏の服装や表情について心を奪われたかのような描写もあった。
 国際社会にこびる北朝鮮は、外交上のやり直しの機会を求めているのか? 今回の使節団派遣が、北朝鮮強制収容所から放り出され、うちひしがれた両親のもとにまるで賞味期限の切れた肉の塊のように送り返された米国の大学生オットー・ワームビア氏の瀕死の状態の埋め合わせになるというのなら、あなたは私よりずいぶんと頭の切り替えが速い、人間性の持ち主だ。》

 ワームビア氏とは、アメリカの大学生で、北朝鮮へのツアーに参加中に拘束され、2017年6月に昏睡状態で帰国しその後死亡した。(右の写真)
 《五輪での北朝鮮側の姿勢への答えは、すぐに広まった金与正氏を言い表す呼び名に要約されている。韓国の記者が彼女を「北朝鮮のイバンカ」と呼んだのだ。まじめくさった米国人記者たちも、この呼称を繰り返し使った。
 なるほど。この2人の若い女性はともに、並外れて醜悪な一族(と政府)に、美しく、快活な印象を持たせようとしている。2人とも、トリプルアクセルリュージュを背景にそれぞれの役割を演じることを決めたのだ。イバンカ氏は閉会式に出席するために訪韓する予定だ。
 しかし、醜悪さが皆平等に創られたわけではない。ドナルド・トランプ氏は金正恩氏ではなく、米国は北朝鮮とまったく異なる国であり、そう少しでも考えること自体がばかばかしい。米国で今起きていることに憤るのはいいが、ばかなことを言うべきではない。》
《兄の命令に従って金与正氏は、公開処刑を許可する独裁者の見栄えを良くしようとしている。脱北者によれば、不服従の報いに興趣を添えるため、すべての成人の市民は公開処刑を見るよう強要されているらしい。金与正氏は、空港を歩いている時に死に至る毒を塗りつけられた異母兄や、異様な方法で惨殺された政府高官の殺害において金正恩氏が果たした役割から目をそらさせようとしているのだ。》
最後にブルーニ氏はメディアにこう注文をつける。
 《(重要な問題は)メディアが、あらゆる公的生活を見せ物やコンテストであるかのように扱う傾向があり、その傾向がメディア以外にも広がっていることだ。勝者と敗者は、その者の心のありようよりも派手さで決まりがちだ。金与正氏は魅力的な気晴らしとして点数を稼いだ。それは長い間、トランプ氏が演じてきた役割だ。
 だが、この点は間違いない。米国は、腐った時期のただ中にある。北朝鮮は、芯まで腐りきっている。》(「コラムニストの眼」朝日新聞24日より)

 全体主義の国にとって、外交は常にマヌーバー(策略)であることを忘れてはならないと思う。