日本の脱北者が金正恩の捜査を申し立て

 近所の梅の花が満開に。気温は低いが、確実に季節が動いている。宇宙は無常、一瞬も止まらずに動いていく。それでいいんだな。
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 盤上の勝負に挑む羽生羽生(はにゅう、はぶ)  (朝日川柳より 埼玉県 吉野信幸)
 きょうは、いよいよ羽生結弦君のフィギュアスケートのフリーがあり、また、将棋界初の「永世七冠」を達成した羽生善治さんが、中学生棋士藤井聡太五段と朝日杯将棋オープン戦の準決勝で初めて対戦する。ここは羽生(はぶ)に踏ん張ってほしいと思うのは、自分が年寄りの仲間入りをしたせいか。(来週65歳になるので、きのう、年金事務所に電話して手続きなどを問いあわせたのだった。)
 それにしても、羽生羽生(はにゅう、はぶ)に限らず、日本語の漢字の読みが多様なのは外国人にとってもっとも難しいところだろう。朝鮮もベトナムも漢字を導入したが、原則として漢字一字に対して読みは一つだ。私の学んだベトナム語でいうと、「憲法」(ヒエンファップ)の「憲」は「ヒエン」、「法」は「ファップ」の読みしかない。これが日本語だと、憲子、法子と書いてどちらも「のりこ」という名前になったりする。変幻自在というかファジーというか、こういう言語はおそらく他にないのでは。
 付け加えると、「憲法」は自由、人権、社会などと並んで、明治期に西洋の用語を翻訳するために日本で創作された漢語で、それがベトナムでも使われているのだからおもしろい。ちなみにLOVEを「愛」としたのも明治期の「創訳」である。

 さて、肝心の羽生羽生(はにゅう、はぶ)の闘いの結果だが、明暗を分けた。結弦君は見事に金メダル(今大会、日本初)をとってオリンピック連覇。よかった!
 一方、善治さんの方は、藤井聡太君に敗れた。藤井君は決勝でも広瀬章人八段を破り、優勝。15歳6カ月での棋戦優勝は最年少記録で、中学生での優勝は史上初の快挙。今回の優勝で、史上最年少で中学生初の六段となった。こないだまで四段だったのに。天才だな。
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 テレビが平昌の美女応援団の動向を詳しく報じるなか、メディアには注目されないながら、日本にいる脱北者が新たな行動を起こした。 
 《1959〜84年の帰還事業で北朝鮮に渡った多くの在日朝鮮人が人権を侵害されているのは、事業を進めた北朝鮮在日本朝鮮人総連合会朝鮮総連)の責任だとして、北朝鮮を脱出(脱北)して日本に住む川崎栄子さん(75)が近く、国際刑事裁判所ICC)に捜査を申し立てる。捜査対象として、朝鮮労働党金正恩キム・ジョンウン)委員長と朝鮮総連許宗萬(ホ・ジョンマン)議長を挙げている。》朝日新聞:写真は日本外国特派員協会で記者会見する川崎さん)
 川崎栄子さんは1942年に京都で生まれた在日2世。1960年、17歳で家族とともに「帰国船」で北朝鮮に渡り、2003年に命がけで脱北した。
 いま日本にはおよそ200人の脱北者が住むが、北朝鮮に対して人権を守れと声を上げることは容易ではない。北朝鮮には恐ろしい「連座制」があり、ある人が体制に反抗的と見なされれば、家族や親戚、友人までが処罰されるからだ。その中で、川崎栄子さんは、朝鮮総連本部の前で顔を晒しマイクを握って訴えることまでしてきた。
 2014年2月、国連の特別調査委員会(COI)は、食糧危機や政治囚収容所での拷問や虐待、他国の人びとの拉致など北朝鮮による人権侵害を「人道に対する罪」と歴史上初めて認定し、人権理事会は翌月、責任者に対する制裁や国際的な刑事司法の枠組みへの付託を国連安全保障理事会に求める決議を採択した。国連は、極秘裏に3人の脱北者をスイスジュネーブの国連本部に招いて、情報の真偽を調べたが、川崎栄子さんはその一人であり、今迄長年にわたり北朝鮮の過酷な現状を国際社会に訴えてきた。

 拉致問題に隠れてあまり知られていないが、日本から9万3千人もの在日韓国・朝鮮人とその家族が北朝鮮に渡った。資本主義圏から共産圏への大規模な人口移動は史上唯一これだけだ。その後、彼らは日本への一時帰国も許されず、ずっと人権を無視した状態に置かれている。不満分子のレッテルを貼られて収容所送りになり、命を落とした人も少なくない。
 朝鮮半島の問題を、パワーバランスや政略、駆け引きからでなく、川崎さんのいう「人権」の視点から見れば、まだ違った姿が浮かび上がってくるだろう。朝鮮総連の下部機関としての朝鮮学校が、民族教育をするだけの「普通の学校」などではないことも見えてくるはずだ。