安田純平さん拘束からまる2年がすぎた

 シリアのアレッポから惨状をツイッターで訴え続けた8歳の少女が、アメリカの雑誌「タイム」の「インターネット上で最も影響力のある25人」の一人に選ばれた。

 バナ・アルアベド(Bana al-Abed)さんで、去年9月から、空爆で街が破壊されたり友人が亡くなったりした体験をツイッターを通じて世界に伝え、戦闘の停止を訴えてきた。12月、トルコに避難し、その後、難民としての生活の様子を発信している。バナさんのフォロワーはきょう現在でおよそ37万人。
https://twitter.com/AlabedBana
 20日の「難民の日」には動画で、誰も難民になんかなるべきではない、難民に救いの手をと訴えている。また、立ち上がって、きょう何か命を救うための行動を起こしてくださいとも。シリアの内戦に終結のメドはまったく見えないけれど、あきらめてはいけないなと思わされた。
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 安田純平さんがシリアで拉致されたのが2015年6月23日だから、もうまる2年だ。解放を示唆する情報はまったくない。
 5月2日、毎日新聞夕刊に特集ワイド「ジャーナリスト・安田純平さん長期拘束 政府、力尽くしたか 尾を引く「自己責任論」」という記事が出た。北朝鮮による拉致をのぞくと、邦人の海外での拘束事件としては、小泉純一郎政権下の、左翼ゲリラ「コロンビア革命軍」による矢崎総業現地副社長の誘拐事件(2年9カ月にわたる身代金交渉の末、被害者は戦闘に巻き込まれ殺された)につぐ2番目に長いものとなった。記事は、政府はいったい努力しているのかと疑問をなげかけている。私の発言もちらっと紹介されていたが、安田さんの解放が遅れているのは、政府の「テロリストとは接触も交渉もしない」という異様な方針によるものだ。
(記事は以下を参照:https://www.facebook.com/kikenchihoudouJournalists/?hc_ref=PAGES_TIMELINE&fref=nf )
 1977年のダッカ日航機ハイジャック事件のときには、当時の福田赳夫首相が、「一人の生命は地球よりも重い」として犯人グループが要求した身代金600万ドル(当時レートで約16億円)と日本で服役・勾留中の過激派メンバーなどの超法規的釈放の要求をそのまま呑んでいる。当時は「テロリストと交渉しない」などという方針を政府は採っていない。安倍政権は、国民の生命を守るというもっとも根本的な政府の使命を放棄している。

 最近、一部にこんな情報が出まわっている。
 カタール赤新月社ムスリム圏の赤十字)が、安田さんを拘束しているファタハ・シャム戦線(旧ヌスラ戦線)と交渉した結果、身代金が150万ドル(1.7億円)まで下がった。しかし、日本政府がお金の支払いを拒んでいる。それが安田さん解放が遅れている原因だ》と。カタール赤新月社による交渉、そして150万ドルという身代金の額がリアルで、ちょっと気になる情報ではある。
 ドイツ人女性ヤニーナさん母子の身代金が500万ユーロ(5億6000万円余り)で、外国人ジャーナリストの身代金の相場が、だいたい300万ドルくらいとされていることからみると、低めながらありうる金額かな、と思う。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20160930
 むろん、情報の確度は不明。確実な話なら、このブログに書いていない。

 安田さんのツイッターには今も、シリアに入る3日前、2015年6月20日のトルコでのつぶやきが生々しく残っている。安倍政権を批判しているので、好き嫌いが激しく、情緒面が幼いアベチャンはこれだけでも助けたくないと思うかも。
 《現場を否定するということは個々の人間の存在を否定するに等しいと思う。せっせと取材の邪魔をする安倍政権とかその支持者とか、現場なんか見なくてもネット見てれば全て分かるとか言っているネトウヨとかネトサヨ陰謀論者とか、根本的な問題としてそのあたりが共通してあるのだと思って見ている。》
 《これまでの取材では場所は伏せつつ現場からブログやツイッターで現状を書いていたが、取材への妨害が本当に洒落にならないレベルになってきているので、今後は難しいかなと思っている。期間限定の会員制で取材経過までほぼリアルタイムで現場報告することも考えてたが、危険すぎてやっぱり無理そう。》https://twitter.com/yasudajumpei
 一昨日がラマダン明けだったはずだが、拘束中の安田さんにも少しはご馳走がでただろうか。無事を祈る。