マクロン氏を発掘したのはジャック・アタリだった

 東京は最高気温が29度までいった。
 シャツ1枚でも暑いくらい。公園の藤棚が涼しげだ。

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 フランス大統領選挙は、アメリカのそれとは別の意味で驚きの結果となった。7日に行われた決選投票で、エマニュエル・マクロン候補がマリーヌ・ルペン候補をダブルスコアで下して新大統領に就任することが決定した。ダークホースの39歳。フランス共和制史上最年少の大統領であることにくわえ、24歳年上の高校時代の既婚教師と結婚したなどの話題でも、世界から注目を浴びている。支持率が低い、支持母体が弱い、首相との「ねじれ」の可能性(6月の国民議会(下院)選挙で「前進!」から首相が出る可能性は小さい)、政治経験の浅さなどマクロン政権が短命に終わるとの予測もあるが、普通の政治家じゃないみたいで、意外にがんばるんじゃないか。
 というのは、マクロン氏を政治の世界にデビューさせたのが、フランスを代表する知性と言われるジャック・アタリ氏(73)だと知って見直したからだ。アタリ氏はアルジェリア出身のユダヤ系フランス人の思想家で、ミッテラン大統領の側近として81年から91年まで大統領補佐官を務めた。そのアタリ氏が10年前、若いマクロン氏の突出した才能に惚れ込み、当時野党だったオランド氏に顧問として採用させる。マクロン氏はその後、オランド政権の経財相にまでなった。

 アタリ氏を先週の報道特集がインタビューしていた。「国家元首に求められる最大の資質はチャンスです。彼は大きなチャンスを得たのです。オランド大統領が再選を断念したというチャンス。社会党内部が紛糾したというチャンス。チャンスと才能が組み合わさると国家元首が誕生するのです」。いかにもアタリ氏らしいしゃれたコメントだ。
 実は、ちょうどアタリ氏の分厚い『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界』という本を買って読み始めたが、なかなか進まず、拾い読みですませていたところだった。この本は21世紀の歴史を予測したもので、2006年に書かれ、翌2007年のサブプライムローン問題による金融危機を予測したことでも話題になったそうだ。
 この本には、今の世界の様相を言い当てているかに見える文章がたくさんある。
 「(アメリカでは)労働者と『スーパーリッチ』と呼ばれる富裕層との所得の開きにより、アメリカン・ドリームの正当性が再検討されることになる」
 アメリカはスカンジナビア諸国タイプの社会民主主義となるか、または独裁国家になる。または、社会民主主義と独裁主義が交互に登場するかもしれない」
 こうした記述は、社会民主主義的政策を追求したオバマのあとにトランプがやってきた今のアメリカに当てはまるとも言える。
 アタリ氏は、このあと世界はアメリカ帝国の終焉を迎え、「超帝国」、「超紛争」の恐ろしい時代を経て「超民主主義」の出現を見ることになると大胆な予測をしている。
 おもしろそうだ。ちゃんと読んでみよう。