ペンは剣よりも・・・

お前のブログに「節気」とか「候」とか出てくるけど何なの、と質問されるので、ちょっと説明しておこう。
二十四節気」とは。一年を24分割して、立春立夏立秋立冬を区切りに四つの季節を設定。それぞれの季節を六節気に分けて季節の指標にしたもの。
「七十二候」は日本独自に発達した暦で、一つの節気をさらに5日ごとに「初候」「次候」「末候」と三つに分けたもの。それぞれを「霜始降」(しも、はじめてふる)などと季節の特徴を短い言葉で表す。人々はこうした暦を農作業や暮らしの目安にしてきたという。日本人の感性をなぞりたいので、なるべく意識するようにしている。
さて、今は神無月で節気は「霜降」(そうこう)。霜が降り始め、冬の到来を感じるようになる。
この時期は中秋の名月十五夜)と旧暦9月13日の十三夜の名月と夜空の二大イベントがあるという。十三夜は、恥ずかしながら知らなかった。そういえば、いま毎日通勤途中に口ずさんでいる井上陽水の名曲『神無月にかこまれて』の冒頭が「人恋しと泣けば十三夜」だった。どちらかの月を見逃すのは「片見月」(かたみづき)といって野暮とされたそうな。また、この二つの月見は、男女が一緒に見る約束をする恋のイベントだったともいう。古き日本、いいですねえ。
さて、いまは霜降の初候で、さっき出た「霜始降」、明日28日からが次候の「霎時施」(こさめ、ときどきふる)。通り雨(時雨)が多くなる季節とされる。末候「楓蔦黄」(もみじ、つた、きばむ)が11月2日から。今年はどこかに紅葉狩りに行きたいな。
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朝日新聞1面の「折々のことば」は毎日切り抜いている人も多い人気コラムだが、24日の「ペンは剣よりも強し」The pen is mightier than the sword.の発祥は意外だった。
《英国の政治家・小説家の戯曲「リシュリュー」の中のせりふ。ただし「偉大なる人物の統治下では」との条件がつく。つまりそれは、いかなる抵抗勢力といえども統治者の令状一枚で潰せるという意味だった。その意味が反転して、権力に屈しない言論の精神をうたうことばになった。その意味が元に戻ってはいないか。この自己検証に堪えてこそのジャーナリズムである。》
17世紀のフランスの宰相リシュリューは、部下の軍人が自分を暗殺する計画を立てていることを知り、これに対して、署名すれば発効する令状で潰せると語るシーンが戯曲にあるという。
知らなかった。「文は武に優る」と単純に思っていた。
それはそれとして、最後のジャーナリズムへの警告はそのとおりだ。

先週、先々週と、2週つづけてAbemaTVで、尊敬するリポーター歴30年の所太郎さんと拉致問題を語り合ったが、待ち時間、雑談で所さんが、最近のマスコミ記者の仕事の質が大きく変わったといった。「昔は自分で情報を採ってきて警察に『当てた』もんです、今の記者は、もう『朝駆け夜討ち』なんてせずに、警察からの情報提供を口開けて待っていますもの。これじゃ、権力へのチェックも何もできませんよ」。
所さんのような歴戦の取材者にもっとがんばってほしいものだ。