南スーダンの危機に自衛隊はどうする?3

怖いニュースが続く。フランス・ニースで80人が死亡するテロが起きた。
1年半で3回目のテロ。この手の事件は続きそうだ。

 このニュースですっかり隠れてしまったが、南スーダンの邦人はとりあえず退避できたようだ。
 《南スーダンの首都ジュバに滞在する日本人の退避に備え、航空自衛隊のC130輸送機3機が14日朝(日本時間)、近国ジブチに到着した。政府は同日中に1機をジュバに派遣し、日本人4人をジブチに待避させた。13日には国際協力機構(JICA)関係者ら計93人が民間機で、ジュバから隣国ケニアの首都ナイロビに退避した。(略)
 13日にナイロビに退避したのは、JICAのほか大使館関係者ら日本人47人と、現地で日本企業の下請けとして作業に従事していたエジプト人やフィリピン人ら46人。JICAが調達した車両でジュバ空港まで移動し、民間機をチャーターしナイロビに移った。》(朝日新聞
 
 本来は、350人の自衛隊も、PKO派遣条件(停戦が合意されている)が完全に崩れているのだから退避させるべきなのだ。それを「武力紛争は発生していない」と強弁して派遣を継続する異様な事態になっている。そもそも、南スーダンでは内戦がずっと続いてきた。停戦合意と戦闘再燃を繰り返し、今では、人口の4分の1にあたる230万人が住む家を追われ避難民になっている。

 新たな法改定で、自衛隊はPKOにおいて「停戦監視」「被災民救援」だけでなく「安全確保」「駆けつけ警護」「宿営地の共同防衛」などの任務も担えるようになり、武器使用も「正当防衛」「緊急避難」だけでなく「任務遂行のため」にも認められる。  
 「もっと前に出ろ」というわけである。
 一見、国連PKOの変化に沿ったものに見えるが、これは今ある矛盾をさらに広げる。
 これまで自衛隊は、PKFの「お客さん」として最も治安のよいところで裏方の工兵部隊を担ってきたが、これからは他の国の軍隊のように「文民保護」も手がけることになる。憲法で縛られた「撃ちにくい銃」を持たされたまま、もろの「戦場」に踏み込むのだ。PKOの実態をよく知る伊勢崎賢治氏(東京外語大教授)は、自衛隊から犠牲者が出るのは時間の問題だという。

自衛隊は工兵扱いで、道路工事などが任務だが、今はこんなことはやれないでいる】
 さらに、自衛隊が発砲した場合、また自衛隊員が武装勢力の「捕虜」になった場合の法的な不備も、深刻なレベルにある。日本だけが、国家として、戦時国際法・国際人道法違反に対処する法体系も軍法ももっていないからだ。 
 自衛隊は、9条で「交戦主体」になれず、「武力の行使」を禁じられている。だから、国会で追及されると「UNMISSの活動地域において武力紛争が発生しているとは考えていない」と強弁し、「武力の行使」の可能性はないことにしているのである。
 南スーダンへの次期派遣隊(12月派遣)から、新たなPKO法にもとづく新任務が課されるかもしれない。実態にも法制度にも目をつむったまま。
 
 いったん撤退し、法整備してきっちり「軍隊」として派遣するか、あるいはPKO自体に自衛隊を出さないという選択肢しかない。

 実は、国連南スーダン共和国ミッション (UNMISS) への自衛隊の派遣は、2011年、民主党の野田政権のもとで決定された。
 日本では、国連の活動なら平和的なものだろうというイメージがいきわたっていること、また、幸運にも、これまで自衛隊PKOで銃を発射することがなかったこともあり、野党になった民進党なども追求が弱い。
 いつなんどき自衛隊員の血が流れるかわからない現場が南スーダンだ。PKO の現実を政治家もメディアも直視すべきだ。