日本で初めてのチャンビの写真展開かる

takase222016-04-30

 きょうは映画と写真展を観に行った。
 映画は「スポットライト 世紀のスクープ」。
 http://spotlight-scoop.com/
 「ボストン・グローブ」という新聞が、タブーとなっていたカトリック教会の暗部に切り込む取材をいかに遂行したかを事実にもとづいて描いたドラマだ。この取材をもとに、地元のカトリック教会の神父多数が性的な児童虐待をしているという衝撃的な事実を、教会の組織的隠蔽体質とともに暴露するスクープで、ピュリッツァー賞も受賞した。スポットライトとは、同紙の調査報道の記事欄の名前で、2002年はじめから、神父による性的虐待問題をこの欄で報じ続けた。同紙の報道の結果、アメリカ全土、さらには全世界で神父による性的虐待が問題化した。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E6%95%99%E4%BC%9A%E3%81%AE%E6%80%A7%E7%9A%84%E8%99%90%E5%BE%85%E4%BA%8B%E4%BB%B6
 この映画、アカデミー賞「作品賞」と「脚本賞」を受けている。
 登場する記者や上司がかっこいい。情熱あふれる取材で壁をひとつひとつ打ち破っていくおもしろさを堪能した。

 印象に残ったシーン。
 主人公の記者マイク(マーク・ラファロ)が、裁判所に児童虐待の決定的証拠となる文書を見せるよう要求する。判事が、それが機密性が高い文書に指定されていることを知り、マイクに向かってこういう。
 「これを報道したら誰が責任をとるんだ?」
 マイクが切り返す。
 「では、報道しない場合の責任は?」

 この映画を観て、新聞記者になりたいと思う若者は多いだろう。
 私は大マスコミの存在意義を考えさせられた。強大なカトリック教会の力は地域社会全体を覆っており、名門の「ボストン・グローブ」だからこそ対抗しえたともいえる。「大統領の陰謀」のワシントン・ポストには、権力中枢から直接的な圧力をかかったことを思い出す。圧力をはねのけて報道したときの衝撃度、影響の大きさは、マスコミ企業体ならではのものがある。
 権力の脅しにひるまないメディアの独立性こそ、我々が学ぶべきものだと思う。
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 午後は、ペルー大使館で開催されている「マルティン・チャンビ」の写真展へ。
 ペルーが生んだ偉大な先住民出身の写真家チャンビの写真展は、日本で初めてだという。
http://embajadadelperuenjapon.org/ja/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%93%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F%E5%B1%95%E3%82%92/

 写真展開催は白根全さんの尽力によるもの。自身写真家でもある白根さんは、20年前にペルーでチャンビの作品に魅了され、以来、彼の遺族や作品の権利者と交流してきたが、どうしても日本にチャンビの素晴らしさを紹介したいと手弁当で今回の企画を実現させた。
 白根さんは、世界に二人しかいないという「カーニバル評論家」であり毎年のようにリオのカーニバルを訪れている。また、関野吉晴さんのグレートジャーニーの初代コーディネーターを買って出るなど、ロマンに生きる人である。
 白根さんが心底しびれたというチャンビの作品を観たいとペルー大使館に初めて行った。

 きょうは白根さんと飯沢耕太郎さん(写真評論家)のトークショーがあり、40~50人の観客で大使館の「マチュ・ピチュ」ホールはいっぱいになった。https://www.facebook.com/events/1002716373116306/
 ポートレートも風景写真もすばらしい。
 芸術的であると同時に独特のメッセージ性もある。
 ラテンアメリカは文学や音楽だけでなく写真もユニークなかたちで発展させているという。
 白根さんはトークラテンアメリカの魅力を情熱こめて紹介。
 コロンブスの航海以前は、ドイツ料理にジャガイモが、イタリア料理にトマトが、朝鮮料理にトウガラシがなかったんですよね。トマト、トウモロコシ、ジャガイモ、カボチャ、インゲン、ピーナツ、イチゴ、パイナップルなど、みな、アメリカ大陸の先住民が品種改良しながら育ててきたものです。ジャガイモだけで3500種もあってそれぞれ味が違います」と白根さん。
 ラテンアメリカをもっともっと知りたくなった。