核ミサイル開発は「カード」ではない

takase222016-01-09

散歩中に通りかかった生垣に真っ赤な実が。
南天の実は冬の季語だが、どうも冬の感じがしない。
山形の実家のあたりでは、そろそろ雪降ろしを考えるころだが、今年は全く雪がないという。ちょっと気持ちが悪い。
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遅れてしまいましたが、明日の放送予定です。
シャルリ・エブド事件から一年、ゆれるフランス社会のイスラム教徒を取材しました。弊社スタッフが放送準備中です。

【ドキュメンタリーWAVE「苦 悩する仏イスラム社会〜テロ後 何がおきているのか〜」】
NHK BS1 放送:1月10日(日)22:00〜22:49
       再 放送:1月14日(月)18:00〜18:49
  
 2015年11月13日に起きたパリ同時多発テロ。フランスの 穏健派イスラム社会は、先の「シャルリー・エブド」誌への銃撃事件以降、フランス社会との対話と独自の改革も進めてきたが、以前にも まして厳しい状況に陥ってしまった。反イスラムイスラムフォビア)の動きも加速。被害の相談を受け付ける団体の窓口には、差別や中 傷などを受けたイスラム教徒からの相談が急増している。一方、フランスのイスラムコミュニティーの中では、移民第二世代といわれるフ ランス生まれのイスラム教徒たちが、なんとか「共生」の道を見つけ出そうと動き始めている。今回のテロ事件の衝撃の深さと、イスラム と共生する社会をどう作れば良いのか、思索し、模索し、発信し続ける若い世代の姿を捉えてゆく。  http://www.nhk.or.jp/documentary/で予告動画をご覧になれます。

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北朝鮮の「水爆」実験。
北朝鮮の核ミサイル開発が、一般には「駆け引き」のための「カード」として論じられているのが、いつも引っかかる。

核ミサイルの開発はあの国の最重要の国家方針である。
そのためには、高価な機器や資材、部品を外国から購入し、多くの研究者、技術者を留学させノウハウを身に着けさせなければならない。巨額の外貨と選りすぐった人材を長期に投入する大プロジェクトである。
90年代後半に北朝鮮を襲った飢餓で、200万人とも300万人ともいわれる大量の死者を出しながら、核ミサイル開発は続けられ、98年のテポドン発射、2006年の核実験へといたる。
国民を飢えさせても、国の経済が傾いても、核ミサイル開発は何としてもやるというのが北朝鮮の国策なのだ。
国際社会がどう反応しようが、ミサイル発射実験、核実験を繰り返しているのは、実戦で使用可能な核兵器を一刻も早く完成させるためだと考えるのが最も自然ではないか。
もちろん、核兵器は戦争にも外交にも利用できるのだが、アメリカへの「カード」として核開発をやっているという解説では本末転倒である。深刻な事態を認めたくない「願望」がこういう見方になるのか。

8日の「報道ステーション」で憲法学者の長谷部恭男教授が、古館氏から「水爆」ネタをふられて、あの国はちゃんと損得の計算ができるはずですから云々とコメントしていた。
しかし、北朝鮮が「分からない」のは、あの国が、我々が常識とする「損得勘定」では動いていないからだ。
そこにこちらが勝手にこうではないか、ああではないかと見当違いの推測を重ねて、北朝鮮は「いつも裏をかいてくる深慮遠謀の国家」という虚像を作り上げてしまうのだ。
例えば、あの国の人民が飢えるのは、食糧が足りないからではない。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120415

しかし、今回はさすがにこういう解説になっている。一歩前進。
「今回、日米韓は従来と異なり、豊渓里の実験用トンネルの封鎖など、核実験の兆候となる事前の動きをつかめなかった。トンネル内で観測機器を移動するなどしたため、偵察衛星や高高度偵察機で実験の兆候を把握できなかった模様だ。
 北朝鮮は国際的な圧力を避けるため、隠蔽工作を徹底したとみられる。核実験を外交交渉の手段ではなく、純粋に安全保障の手段として位置づけていることをうかがわせる。
 北朝鮮は今年5月、36年ぶりに朝鮮労働党大会を開く。関係部署は党大会までに最大限の成果を上げて正恩氏に忠誠心を示すことで、生き残りを目指す。軍や科学者にとって、「忠誠心」は核実験や長距離弾道ミサイル実験、そして「水爆実験」の実施だ。北朝鮮の独裁は、徹底的な縦割り制度を取るため、過去に外交部門と事前調整を行ったことはない。」(7日朝日新聞
そもそも核開発自体が「駆け引き」のカードとして行われているのではないから当然なのだが。