「政権批判はするな」とクギをさされた常岡さん

takase222015-01-26

日本人がイスラム国に斬首されるという大変な時代になった。
官房長官は会見のたびに「後藤健二さんの早期解放に向け、あらゆるチャンネルを通じて働き掛けている」というが、いまだにイスラム国との直接の接触、交渉にはいたっていない。
安倍首相は、米英とともに「テロとの戦い」を呼号するが、中東政策を大きく誤り、アフガン、イラク、シリアをむちゃくちゃにした米英と連携することは人命優先にはまったくならない。
適切な対応をとっているとはとても思えない。

ところが、共同通信社の25日の世論調査では、政府の事件への対応を「評価する」と「ある程度評価する」が計60・6%、「評価しない」と「あまり評価しない」が計31・2%で、おおむね評価が高いという。
これにメディアの論調も引っ張られているようだ。

常岡浩介さんは、去年9月に、前月8月にイスラム国に拘束された湯川さんを助けに行き、その機会にイスラム国首都のラッカを取材してきた。だから、この人質事件を語らせるにはかっこうの人物で、テレビ・ラジオはじめ、メディアに連日登場しているが、ここ2〜3日、ある変化が起きているという。
番組前の打ち合わせで、「安倍政権批判はしないでください」と言われたというのだ。

安倍内閣への批判に対して、悪いのはイスラム国でしょ、いま国民は団結すべきで、政府を批判するときじゃないでしょ、といった意見をいう識者をスタジオでも見るようになった。キャスターがそれをいうこともある。
このムード、気持ちが悪い。

テレビのスタジオでは、「身代金を払うべきかどうか」といった単純化された、しかも間違った対比のなかで議論されているが、「交渉」がイコール「金を払う」ではないし、ましてや「テロへの屈服」ではない。

常岡さんは先日の会見でこう言っていた。
《身代金を払うべきなのか払うべきでないのかというと、僕の意見は払うべきではないです。払ったお金でイスラム国は活動していることがかなり明らかになっている。犯行が繰り返されるだけだと思っています。
他に手がないのか。こちらから提案ができるのかと言うと、いくつもできると思う。彼らが言っていたようにイスラム法廷を開いてくれればいい。そうすればこちらから証人を立てることもできます。完全無罪が取れないとしても、たとえば鞭打ち刑で許されるのであれば、首を切って殺されるよりましです。あるいはイスラム法に懲役刑はないかもしれませんが、懲役刑を出すなら、その場で殺されるよりはましです。そうやって、少しでも譲歩を引き出す手はあると思います。
ひとつには、イスラム国は本音と建前を使い分ける組織だと僕はみなしていますけれども、建前がある以上、彼らの建前を主張する戦い方もあると思う。イスラム法に従えばこうでしょと。そうすれば、少なくとも後藤さんを殺す必然性はないはずです。》
交渉は闘いなのだ。

とにかく接触を試みるべきだ。だが、もう手遅れかもしれない。

ただ、これ以上、安倍内閣が間違わないよう、批判は続けられるべきだ。
きょうは最後に、内藤正典氏のツイートを紹介する。
イスラム国が凶暴なテロ組織なのはその通り。しかし、それを生み出したのはイラク戦争であり、シリア内戦を放置した国際社会である。ISが自然発生したかのように「テロとの戦い」を正当化するな》
https://twitter.com/masanorinaito/status/559374977405702145