ミスターXは命がけだった

takase222014-06-10

ベンチに人の影が・・。と思ったら、女性の彫像だった。
ここは国会図書館。新聞検索が無料なのとあらゆる雑誌の記事検索ができるのがいい。食堂で昼食も食べて長居してしまった。
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桂宮親王が亡くなった。
天皇陛下のいとこだとニュースで知った。皇室についていかに無知であることか思い知る。「薨去(こうきょ)」などという言葉も使われて、日本は共和制でなかったことをあらためて自覚した。
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今週の「朝日歌壇」に「ホームレス」の坪内政夫さんが2首入選。
一つは母の日に詠んだ歌のようだ。

山谷までさがし歩いた亡母(はは)と聞くカーネーションよ大空に咲け

重たくて坂道バックのリヤカーをコント劇のごと笑われている

恵まれない身を嘆くことなく、しっかりと生きている坪内さんに励まされる。
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拉致問題に最も熱心に取り組んでいる政治家といえば、有田芳生参議院議員だろう。
ダントツの質問回数に見られるように国会で精力的に活動しているほか、めぐみさんの娘のウンギョンさんの消息を入手して横田さん夫妻に知らせるなど、独自ルートによる情報収集を続けてきた。一昨年来、日本人遺骨問題でも北朝鮮側と接触、自ら北朝鮮を訪問している。
今回の日朝合意の経緯について、有田さんはこう言っている。

横田夫妻の決断が日朝関係を動かした。孫に会うことを決めたことで安倍政権は昨秋から北朝鮮側と水面下で交渉を開始。孫と初対面したことで環境が整い、局長級会談が行われ、拉致問題の再調査に合意。」
「いま日朝交渉が進むのは、小野啓一北東アジア課長と新「ミスターX」との水面下交渉の成果だ。きっかけを作ったのは昨秋の横田滋さんと早紀江さんの孫に会うとの決断と首相への要請にあった。」(ツイッターより)

2002年の日朝首脳会談は、田中均アジア大洋州局長が1年におよぶ秘密交渉の末に実現した。安倍政権下では、こうした地道な交渉の積み上げはないと私は聞いており、当分進展はないと思っていたので、今回の合意には驚いた。
有田さんによれば、横田さんたちの孫との面会話で一気に動き出し、今回の合意へと急展開したのだという。
拉致問題の解決を「最重要課題」とする安倍晋三首相が合意を急ぐのは当然として、このスピードを見ると、北朝鮮側も事態を動かそうとしているようだ。
「今回の文書は、北朝鮮拉致問題に本気で取り組もうとしている証しと捉えていいだろう」とコメントする専門家もいる。(平岩俊司関西学院大教授・朝日5月30日)

では「本気」とは何か?
北朝鮮で外交交渉にあたる責任者たちはつねに「本気」である。
2002年の日朝首脳会談の前、日本側が支払う「賠償・補償」の金額を示せと要求する北朝鮮の「ミスターX」と拉致の情報を出せと迫る田中均氏の間で議論が堂々巡りになったとき、「ミスターX」が思いつめたように、こういったという。
「あなたは更迭されることですむかもしれないけど、自分たちはそんなものでは済まないんです。私は命がけでやっているのです」。船橋洋一『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』)
彼らは必死である。
では北朝鮮の指導者は何を考えているのか。
(つづく)