ワーカーズコープの映画「Workers」

takase222012-12-21

きょう、森康行さんの映画『Workers(ワーカーズ)』の試写会に行ってきた。
写真は試写後、映画への思いを語る森監督。
森康行監督は、『ビキニの海は忘れない』、『渡り川』、『こんばんは』(03年キネ旬文化映画ベストワン)、『かすかな光へ』などの作品で知られる。
森さんとは不思議な縁があり、大学が違うのに大学一年のときからお付き合いがある。
私の所属するサークル(中国研究会)の会議をY先輩のアパートで開くことがあり、ちょくちょく泊まったりもしていた。そこにY先輩と同居していたのが森さんで、Y先輩とは静岡県掛川西高校時代の同級生なのだった。
その後、私がこの業界に入って「日本電波ニュース社」で森さんとばったり遭遇した。30年前、ちょうど宮崎美子さんの番組を作ろうとしていて、宮崎さんが会社に来たりもしていた。そのころ宮崎さんがホンダのバイクのCMに出ていたので、私が「美子ちゃん、きょうはラッタッタで来たの」とタメ口をきいて後で上司に怒られたのを鮮明に記憶している。で、森さん、宮崎美子さんをカンボジアアンコールワットに連れて行く番組のディレクターをすることになった。彼女の卒業論文はたしかカンボジアの歴史だったと思うが、東南アジアへの高い関心をもつ人だ。
その縁もあって、この映画のナレーションを宮崎さんに頼んだら快諾してくれ、森さんと30年ぶりの再会を喜び合ったそうだ。
映画のキャッチは《「小さな共生社会」をつくる新しい働き方 スカイツリーの下で繰り広げられる まちの人々とワーカーズコープの物語》。企画・製作は日本労働者協同組合(ワーカースコープ)連合会センター事業団。
日本では協同組合が購買運動として生れた歴史があるため、「コープ」というと消費者コープしか思い浮かばない。だが、協同組合運動の歴史がながい欧州では、ワーカーズコープ、つまり労働者の協同組合が広く展開している。
ワーカーズコープ連合会の定義では「働く人々・市民がみんなで出資し、民主的に経営し、一人一票の決定権をもち、責任を分かち合いながら、地域の必要に応える仕事を自らの手で創り出す、仕事おこしとまちづくりの協同組合」となる。
形態はさまざまだが、例えば一人5万円づつ20人が出して100万円を資本金とし、協同組合のメンバーは、事業の展開方法から給与額の増減まで1票の権利をもって決定に加わる。ここでは協同組合員が経営者でもあり労働者でもある「他人に雇われない」働き方をするわけである。
映画の舞台はスカイツリーのすぐ下、墨田区の下町。映画に登場するワーカーズコープは、児童館、高齢者施設、介護事業などで、いずれも地域との密接な関係を築きながら運営されている。「自分の」事業なのだからスタッフの意欲は高いし、お客が顔見知りや近所の人なので仕事が丁寧になる。
いま、政府や自治体が経費削減で、図書館や児童館などの運営を民間に委ねる「指定管理者制度」を広く導入しているが、ワーカーズコープが受注して運営すると雰囲気が一変することがあると聞く。それはこの映画の児童館の例を見るとわかる。途絶えていた餅つき大会を、地域の高齢者に一肌脱いでもらって復活させたら、近所の子ども100人以上が参加して大きな地域行事に発展したという話が描かれている。館長のツルの一声で決まる他の児童館とは違い、協同組合員一人ひとりが、ああでもない、こうでもないと意見を出し合って決めていく。まだるっこしいが、実はこういうのが民主主義なんだろう。
いま日本では5万人がワーカーズコープに加わっている。
力を入れているのが「食・ケア・エネルギー」の分野で、例えば、高齢者の見守りを兼ねて配達する弁当屋、天ぷら油の廃油からバイオディーゼルを作る事業などもある。パン屋さんなど「普通」の業種も増えている。
仕事がなければ、自分たちで仕事を作ってしまえばいいのだから、行政も協力して失業対策に組み込むことを期待する。
映画『Workers(ワーカーズ)』は、来年2月からポレポレ東中野でロードショー上映される。