超変動帯の日本列島人

takase222012-12-02

数日前、かみさんが、町の並木の紅葉がきれいだと言ってたのを思いだし、娘と散歩に出た。
途中、白い花をつけた木があって、これは何だろうと立ち止まった。つりがね型の白い花が下を向いて咲いている。スズラン、ドウダンツツジ、馬酔木(アシビ)、ブルーベリーがこういう花だが、どれでもない。赤い実も見える。花が咲く同じ時期に実がなっているのだ。後で調べようと写真に撮った。ネットで調べたら「イチゴノキ」というのだそうだ。花と実が一緒に楽しめると最近人気なのだという。
紅葉はすでに散って、今年は一番良い時期を見逃してしまった。ここ2〜3日で葉がすっかり落ちたようだ。
駅前の本屋を二軒回ったら、ともに『神社は警告する〜古代から伝わる津波のメッセージ』講談社)を置いていた。友人から、本屋に行ったけど、神社の本置いてなかったぞと言われたので、本屋によってみたのだ
。「たくさん積まれていないね」と娘。たしかに平積みにはなっていないが、ちゃんと本が売られているのを確認。

何日か前のブログで、「この本の結論は?」と振っておいてそのままだった。
共著なので統一見解ではないが、わたし的には一言で言えば、「昔の人は偉かった」。
私の「おわりに」では、プレートテクニクスから日本人の国民性を論じている。一部を紹介する。
《世界を見渡すと、日本列島は、美しく豊かな自然に恵まれている。一方で、地震津波、地滑りと自然災害の多発するところでもある。自然の豊かさと災害は、実は裏腹の関係にあったのだ。
地球は進化する一つの生命体であり、今も激しい変化の過程にある。地表を覆う十数枚のプレートの相互運動が、地震津波、火山噴火、山脈の形成を引き起こし、それが生物の進化に大きく寄与している。
地球上の地質を「安定大陸」と「変動帯」に二分すると、北米プレート・ユーラシアプレートフィリピン海プレート・太平洋プレートと四枚ものプレートがぶつかる日本列島は、世界でも珍しい超「変動帯」に属する。生命体としての地球の営みの、いわば最前線であり、地震津波の頻発地帯である。それは同時に、豊かな生態系に恵まれることをも意味した。
地質変動は豊かなミネラルを海に供給し、列島近くに世界有数の漁場を形成した。狩猟採集時代の遺跡の密度の高さは、日本列島がいかに豊かで暮らしやすいところであったかを示すしている。
河川が氾濫した後は豊作になり、津波が豊漁をもたらすことは各地に伝えられている。「地滑り地の米はうまい」と言われる。
災害が豊かさと裏腹だということを、この列島に住む先人たちは知っていた。地球の営みを善か悪かと分けることをせず、地震津波を含む大自然を神として畏怖し、地域で祀り、神社を守りつづけてきた。
列島の先人たちは、災害を怨まず、自然にさからわず、ほがらかに生きてきた。はるか昔から引き継がれてきたその伝統は、私たちの心の深いところに今もしっかりと息づいている。
それは、今回の大震災への対応にも現れていたのではないだろうか。
取材や救援で被災地に入った海外メディアを一様に驚かせたのは、目を覆いたくなる惨状のなかにあって、絶望に打ちひしがれることなく冷静にふるまう被災者たちの姿だった。
他国では災害の後につきものの、暴動や略奪、無秩序状態がないだけでなく、人々は少ない食糧や水を分け合い、励ましあって悲劇を乗り越えようとしていた。・・・・・》
北方(シベリア)から、あるいは朝鮮半島から、また南方の島伝いにこの列島にやってきた我々のご先祖が、超変動帯である日本列島で災害とともに生きるなかで「日本列島人」になってきた、というイメージ。
実は、私はこの考え方を、「健全な愛国心」形成のベースにできないかと思っている。いまの日本人、とくに若い人の自己肯定感のなさを克服する一つのポイントが、愛国心だと考えているからだ。今後、タブー視されるこのテーマも書いていきたい。