いよいよ混迷するシリア

takase222012-08-19

シリア情勢がいよいよ混迷してきた。
まず、シリアの政府と反体制派による武力紛争を監視してきた国連シリア停戦監視団(UNSMIS)が解散したとのニュース。
《最大時に軍事監視員と文民を合わせ約400人を数えた要員の大半は既に出国し、23日には撤収を終える見通し。
 ババカル・ガイエ団長は18日、ダマスカスで記者会見し、戦闘を止められなかった理由として、当事者が停戦合意を無視したことを挙げた。ガイエ団長は「(政府軍と反体制派の)両者は民間人保護の義務を負うが、(義務は)尊重されなかった」と語った。
 シリア情勢は、監視団が4月下旬に本格的に展開を開始した直後、いったん沈静化に向かったが、5月下旬以降の虐殺事件を機に戦闘が再び激化した。国連安保理は今月16日、暴力低減など活動の前提条件が満たされていないとして任期を延長せず、廃止を決めていた》(読売19日)
国際社会がなすすべもなく手をこまねいているなか、シリア国内では政権が分解しかかっている。
6日に、ヒジャブ首相がアサド政権から離反し国外へ脱出、「アサド政権は国土の30%しかコントロールできていない」と言ったが、これに続き、シャラ副大統領が離反したとの情報が反政府側から出ている。
シリアではフランス統治時代に、多数派のスンニを抑えるためアラウィ派というシーア派の分派を権力維持に重用したことから、現在もアサド家はじめ、権力中枢はアラウィ派で占められている。離反した首相も副大統領もスンニ派だが、こうした高官が離反するとなると、政権内部はバラバラになっている模様だ。(写真はアサド大統領)
では、反政府側はどうなっているのか。
6月中旬、『ウォールストリートジャーナル』は、CIAが、自由シリア軍に対し、サウジ、トルコ、カタールとともに支援を拡大。補給物資の調達ルート、通信機器の提供・訓練に関わっているという。
さらに6月21日、『NYタイムズ』が、トルコ南部でCIA要員が活動、反政府勢力のうちどの派に武器援助をすべきかの情報収集にあたっていると伝えた。これによると、サウジやカタールが資金を提供して、トルコ国境から武器が流れ込んでいるが、CIAは武器の行方を監視し情報を集めているという。
アルカイダのトップ、ザワヒリが2月、反政府のイスラム勢力を支援すべしと声明を出したこともあり、アメリカはどの派に支援したらいいかを見極めているという。
シリアをめぐっては、国際的な駆け引きがはげしく展開していることは確かであろうが、そのことが、反政府勢力に「うさんくさい」印象を与える要因になっている。
安田さんがツイッターで、こんなことを言っている。
《アサド政権がやっているのは、米軍がファルージャでやったような、「テロリストは町ごと家族もろとも皆殺し作戦」なのだが、イラク戦争で米軍を批判してた人たちで今はアサド支持をしている人が結構多いのは興味深い現象だ。要するに「反米」でものごと見てるってことなんだろうけど。》https://twitter.com/yasudajumpei/status/234075439805640704
実際、「進歩派」とされる人は、反政府派に対して厳しく、結果的にアサド政権よりになっている傾向がある。
(つづく)