李明博大統領を日本では勝手に「親日」とみなしていたが、実は、彼の思想的な根っこのところには「反日」がある。
竹島上陸に続いて、14日には、天皇が訪韓を希望するならその条件として「(日本の植民地統治期に)亡くなった独立運動家に対し、心から謝罪する」ことを挙げるなど、「反日」発言を先鋭化させている。
日本側は、対抗措置として、10月末に期限切れになる日韓通貨交換(スワップ)協定の枠拡充を延長しない可能性をほのめかしている。
これは「急激なウォン安・円高など市場が混乱した際に日韓で通貨を交換するため、政府・日銀と韓国側は2005年に同協定を開始。昨年10月には欧州危機を背景としたウォン安を背景に上限額を130億ドルから700億ドルへ5倍に拡充した」もので、韓国側からの要請に日本が応えた措置だった。
こうした経済的な不利益も招きかねない「反日」言動を、あのプラグマチストの経済大統領がとるとは。私も正直驚いた。
日韓を離反させる勢力が工作した結果だという陰謀論めいた説もあるようだが、大統領の強い個人的な意思がなければこうはなっていないだろう。
韓国大統領は1期だけで、その末期、あるいは任期後はどんなことが起きるか分からない。金大中、盧武鉉とも側近や親族が贈賄などで逮捕されているし、盧武鉉に至っては本人も捜査対象になったあげく自殺している。
さらにさかのぼれば、全斗煥と盧泰愚は逮捕・収監されており、全は死刑、盧は懲役刑を宣告されている(後に特赦)。
李明博は、すでに実兄が収賄で逮捕されるなど、周辺で摘発が始まっており、これから半年どうするのか真剣に考えをめぐらせているだろうと推測する。
アメリカの大統領は任期切れが近づくと「レガシー」(遺産)づくりといわれる歴史に名を残すために派手なパフォーマンスをする。いい例がクリントンの対北朝鮮正常化とパレスチナ和平の仲介で、大きな注目を浴びた。
李明博も、思い切った外交により栄光ある「レガシー」を作ろうとしたのではないか。これが、今回の彼の異様な「反日」言動の要因の一つだと思う。英雄として歴史に名を残そうという「最後っ屁」。
ところで、李明博の言動が韓国で受入れられるのも、世論のベースに「反日」があるからだが、この「反日」は戦後に政治的に作られたということは、日本では案外知られていない。
私は1989年で、サハリン残留朝鮮人を取材した。残留朝鮮人たちが日本に懐かしい感情を持っていることが意外だった。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100508
その取材はニュースステーションで放送されたが、韓国でも放送することになり、編集のためにソウルに行った。はじめての韓国である、そこでさらに驚くことがあった。
編集が終わった後、夜の街にくりだして関係者と一緒に飲んだ。そこに若い美貌の女流作家が同席した。作品は、テレビドラマにもなる売れっ子だという。
そこで彼女が言った言葉が衝撃だった。
「私の両親は、天皇が死んだとき、二人とも泣きました」
(つづく)