きょうは、ウーマンズフォーラム魚(さかな)=WFF(WWFではない)が主宰する「浜のかあさんと語ろう会」スペシャルを取材に行った。
私は、このWFFという小さなNGOを尊敬していて、ここを通じて被災地支援を続けている。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120224
WFFは、漁業と魚食文化の未来を考える団体で、日本全国の漁業者と消費者の顔の見える関係を目ざし、1996年から「浜のかあさんと語ろう会」を開催している。各地の漁村のおかあさんたちを東京の小学校に招き、特産の魚を一緒に調理しながら交流する。今回でなんと103回目。
きょうは何がスペシャルかというと、 ノルウェーから来日中のクリスティ―ネ・グラムスタ漁業副大臣を東京文京区の小学校に招き、「ノルウェー漁業を学ぼう!」と題してお話を聞き、さらにノルウェー産の魚を料理して食べようというのだ。グラムス副大臣が、ノルウェーの「浜のかあさん」の代表というわけ。副大臣は34歳とまだ若いきれいな女性だった。
実は、去年3月に、ノルウェーの首相と漁業相が来日する予定で、そのときWFFは一度スペシャル版を企画したのだが、大震災で来日できず、今回になったもの。ノルウェーはこうやってトップセールスで魚の輸出振興に積極的だ。
WFFは今の日本の漁業に危機感を持っている。漁村は衰退し、自ら魚を獲らなくなり今や半分は輸入、若い人の魚離れは加速している。
《日本は海に恵まれ、全国に6000の漁村を持つ“海のくに”です。けれども漁獲高は下がる一方で、浜に後継者の姿はありません。いま、“海から食卓”までの間で何が起こっているのかを漁業者から学び、研究者や行政とともに考え、消費者はどうしたらよいかを考え実践する仲間の輪を広げています。そして、こどもたちを対象に海とサカナについて学ぶ「海彦クラブ」活動を推進しています。》(WFF)
私は03年に「ガイアの夜明け」の「水産王国ニッポン 復活の道は?」という番組に関わり、ノルウェーの漁業がいかに進んでいるか、逆に日本がいかにどんどん引き離されているかを知って愕然とした。
ノルウェーでは最新型の漁船が次々に造られ操業している。この漁船がすごい。世界有数の漁業用機器メーカー、「シムラッド社」のコンピューター制御で三次元の映像を結ぶ魚探、トロール網を細かくコントロールする機器が搭載され、全ての乗組員に個室がある快適な環境が用意されている。
驚いたのは漁船の中にトレーニングジムがあったこと!ほとんどの作業が自動化されているので、乗組員は運動不足で「体がなまる」というのだ。生産性が高く、漁船乗組員は平均労働者の倍くらいの収入があり、多くの若者が希望する就職先になっている。
3Kの危険な肉体労働のイメージのある日本の漁船乗組員とは雲泥の差だ。この型の船が宮城県塩釜港に寄港したさい、内部を見学した日本の漁民にカメラがついていったが、日本の漁民たちは「まるでホテルのようだ」とため息をつくばかり。
今回の震災で多くの漁村が壊滅したのを機に、思い切って新たな漁業の姿に挑戦すればよいのにと思うのだが、アイディアが出るとすぐ既得権を守れとばかりにつぶされ、またこれまでのような家族単位の小型船での漁業に戻りそうな気配だ。
日本漁業の課題については、またいずれ。
で、きゅうの「語ろう会」だが、テーマは「塩さば」だった。
知らなかった!日本が輸入する鯖(さば)の9割がノルウェー産だったとは。
ノルウェーでは「塩さば」は食べない。一般的な食べ方は燻製にしてトマトソースをかけるのだという。日本に売るために「塩さば」にするのだが、現地の加工場を視察してきたWFFの白石ゆり子代表は「とっても清潔ですばらしい施設。ノルウェーの魚は安心・安全だというので高くても海外に売れるのよ」という。食の「安心・安全ブランド」―これも日本が見習うべきものだ。
火が通りやすいように、皮に十字に包丁を入れましょう、と料理の先生に教えられて子どもたちが調理。ポン酢とトマトソースをかけて副大臣と一緒に食べた。(写真は初めて塩さばを食べる副大臣と子どもたち)
私もいただいたのだが、ノルウェーの塩さば、油がのっていて実にうまかった。
私は、社会のあり方を北欧に学びたいと思っているが、漁業など個々の分野をみると、すぐに見習って取り入れるべきものがたくさんある。
もっと勉強しなくては。