放鳥トキのヒナ誕生

takase222012-04-23

朝刊一面トップに「放鳥トキひな誕生―佐渡 自然界36年ぶり」の大見出し(朝日新聞)。
おお、やった!
テレビニュースでもくり返しやっていた。
佐渡市では、去年の春に放鳥されたトキのうち、3歳のオスと2歳のメスのつがいの巣で放鳥されたトキでは初めてひなが誕生しているのが、22日、近くに設置した小型カメラで確認されました。
環境省によりますと、ひなの体長はおよそ20センチで、ふ化から1週間程度たっているとみられ、順調に育てば誕生から40日間ほどで親鳥と同じ大きさになり、来月下旬には巣立つとみられています。
この巣には今月1日には4つの卵があることが確認されていて、環境省は親鳥やひなに影響が出ないよう注意しながら、23日も巣の近くに小型カメラを設置し、ほかの卵からひなが誕生していないかを含め観察を続けています。
佐渡市内では、このほかにも卵を温めているとみられるトキのつがいが合わせて10組いて、このうちの1組はすでに卵がふ化する可能性がある時期に入っています。
環境省は、このつがいの巣の近くにも小型カメラを設置して、今後もふ化が続くことに期待を寄せながら観察することにしています。
環境省の長田啓首席自然保護官は「野生復帰の長い道のりのなかでは小さな一歩かもしれないが、着実な一歩だと思っている」と話していました。
トキの飼育や訓練などを行ってきた佐渡トキ保護センターの金子良則獣医師は、「首を上げる力強さがある元気なひなだ。ふ化を知ったときは思わず涙が出てしまったが、まだ、これからだ」と話していました》(NHK
一年前、金子獣医が主人公の「情熱大陸」を放送したのだった。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110515
金子さんは、トキが共存できるような人間の暮らしを取り戻したいといった。社会がどうのこうのという議論ではなくて、ぼそぼそと「トキが(野生で)生きてるってことは、人間のありようっていうか、ちょっと人間も手加減すべきだと思う。ネオンなんてなくたっていいんだし、コンビニだってそんなんに夜やってる必要ないし・・」という言葉が実に味わい深かった。
その翌月、6月11日、佐渡島国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」に、石川県の能登半島とともに認定されたとの発表があった。
これは、伝統農業や文化の保全を目的に02年に始まった制度で、先進国から選ばれたのは初めてだという。佐渡島は国の特別天然記念物トキを中心に、ドジョウやカエルなどの多様な生物がすむ水田づくりが評価された。トキを野生復帰させようという努力が人間の暮し方を変えてきたのだ。トキのおかげ、といってもいい。
日本の野生のトキは03年に絶滅し、中国から贈られたトキで人工繁殖に成功。野生復帰をめざして08年から5回、78羽が放鳥された。これらは金子獣医がヒナのときから手塩にかけて育てたトキたち。つまり、佐渡の空を舞っているのはみな金子さんの子どもなのだ。
去年は何組も抱卵まで行ったのだが、残念ながら孵化はしなかった。金子は気落ちしながらも、来年こそはと意気込んでいたようすだった。それだけにうれしかったのだろう、ビデオでヒナの姿を確認したとき、涙を流したと、そのときそばで取材していた人が教えてくれた。人が近寄れないから、ビデオでの確認になるのだ。
夜になって、さらに2羽の孵化が確認されたとのニュースがテレビの臨時ニュースで流れた。いったん野生で絶滅した種を、野生復帰させることに成功すれば、世界的な快挙である。
原発事故で汚された美しい日本の自然のイメージが、トキの野生復帰で再生してほしい