石巻で「復興」に代わる言葉は?

takase222012-03-13

自転車で図書館に行く途中、ぽーんとひとところ白いところがあり、それは満開の梅の花だった。
寒い寒いと思っていたら、ちゃんと春が来ている。

11日の「情熱大陸」はいかがでしたか。
葉加瀬太郎さんはロンドンに住まいがあり、震災直後からロンドン市内でチャンリティコンサートをするなど精力的に被災地支援に動いていた。
この日の夜もロンドンのカドガンホールで、チャリティコンサートが予定されていた。演奏は日本人留学生が主体で葉加瀬さんの娘さん(葉加瀬さん右後方の大きなリボンをした女の子)も加わっていた。おとといの放送用ライブは、コンサート本番前の午後に演奏していただいたもの。
葉加瀬さんは、この放送用ライブにとても熱心に望んでくださり、バイオリンとピアノだけではじまり後半に10人の弦が加わる、この日だけの特別バージョンのEtupirika(エトピリカ情熱大陸のテーマ曲)を演奏したのだった。
あまりの熱演で、リハーサルより本番の演奏が5秒も長くなり番組最後の石巻からのライブ映像がちょっと尻切れになってしまった。

3.11はどの局も震災一年の特番だったが、どうしても「東京目線」というか、中央から見た被災地のイメージをベースにして番組を作ってしまう。多くの場合、テーマは「絆」であり「復興」だった。
一方、「情熱大陸」では地域紙の記者を追いかけてゆくので、自然に被災地の目線、生の声をひろうことになる。
それは、東京の人々が想像するものとはかなり違っていた。
入社2年目の横井記者が、バレンタインのチョコから「絆」を描けるのではないかと洋菓子店に取材に行った。そこで店員とこんな会話を交わす。

店員:「復興」や「がんばろう石巻」、「絆」もそうなんですけど。
横井:キャッチフレーズみたいな。
店員:そういう言葉に疲れるんですよ。こんだけがんばってるのに、なんで「もっとがんばれ、がんばれ」って言われないといけないのかって。
横井:普段どおりっていうのが一番求めてる?
店員:そうなんです。「いつもどおりにやる」っていうのが一番前向きな姿勢なんじゃないですか。

えっ、そうなのか。
虚を突かれた感じがした。
このあたりの感覚は、「東京目線」では分からない。
このあとで、武内報道部長と平井デスクが、報道部で二人で議論する。

武内:被災地の人間としては、やっぱり一年で家をなくした、大切な人を亡くした。この1年で癒されるかというと癒されない。
 だから世間で、被災地以外で、この1年が過ぎた、いよいよという部分なんだけれど。被災地の心は取り残されていくような感じがする。
平井:復興だ復興だというと疲れてくる。だからさっき武内さん言ったように、取り残される人も出てきちゃうわけよ。
 「復興」に代わる、何かみんなで前向けるような、しなやかな言葉がほしい、女性としては。
武内:「再スタート」とも違うし、言葉で表すとすれば「復興」に代わる言葉として、何が出てくるのか。
平井:難しいですね。

社内で交わされるカジュアルな会話に、まるでドラマのような珠玉の言葉が飛び交っている。
あらためてこの石巻日日新聞というのは、すごい新聞社だなあと思う。言葉や考え方が、中央のジャーナリストたちと違って、借り物でない。地に足がついている感じなのだ。
そして、3月11日号のコラムを書くことになった武内部長は、何を書いていいかわからず、苦悩することになった。
(つづく)