ネット放送も面白いじゃないか

17時半から19時までのニコニコ生放送終了。
岩上安身さんは初対面。きょうはニコニコのMCだが、岩上さん自身がインターネットのメディアを持って毎日発信している。
放送がはじまる前から、視聴者(と言って良いのか?)からコメントが寄せられてモニターに流れる。放送が開始されるや、コメントは、毎秒数個というすごい勢いで画面の右から左に流れてくる。
はじめは、ネット特有のちゃかしたコメントもあったが、次第にそれは少なくなり、内容そのものへの発言がほとんどになった。視聴者が熱心にくいついてきているのは、明らかだった。コメントは1万7千くらい来たそうだ。
テレビでやってほしいという意見も大かった。
ニコ生は、きっちり何秒で終わらなければ、というシバリがないので、「フクシマの子供たちを、国の予算でサマーキャンプへ」という提言も言えたし、8月あたまに旬報社から緊急出版されるDVDの宣伝もできた。
放送途中、映像のナレーションが途切れる事故があったりしたが、スタジオで私が映像を見ながら説明して何とか凌いだ。こんな失敗も、ネット放送の「ゆるさ」が許してくれる。
視聴者の反応をすぐに知ることができるのは、ネット生放送の特徴だ。
私が「福島の子どもをサマーキャンプさせたらいい」と言った直後、「3泊じゃ何にもならない」とのコメントが流れた。あ、誤解されたな、と分かり、すぐに「3泊ではなくて、サマーキャンプ」と言いなおした。
放送後にツイッターなどに寄せられた意見では、「移住リスク」の問題で考えさせられたというものが多かった。
放送中、私は、
チェルノブイリ取材で考え方が変わった。放射能汚染地からは、すぐに全員が避難・移住すべきだと思っていたが、取材後は、放射能リスクと移住リスクと天秤にかけるべきだと思うようになった。移住のストレスがはるかに高い場合がある。QOL(生活の質)を総合的に考えたい」という趣旨の発言をした。
視聴者は、反原発または脱原発の人が圧倒的に多く、私の発言を意外に感じたようだ。
最近、ここも危ない、あれも食べるなという情報が次々に出てきて、小さな子どもを持つお母さんたちは不安でたまらないだろう。
もちろん、これは、例えばサマーキャンプなど、被災者に安心してもらえる施策を打ち出さない政府が悪い。政府がしっかりしていないから、みな、自分で自分の身を守るしかないと、いいかげんな情報にも乗ってしまう。
きのうの朝日新聞夕刊で、澤地久枝が『苦海浄土』を書いた石牟礼道子を、水俣に尋ねた時のエピソードが載っていた。
「『厚生省が定めた基準以上に水銀に汚染された魚介類がいます。獲らないようお願いします』。そう書かれた札が立っていたが、石牟礼は磯の貝を拾って食べた。澤地が驚くと『一つ二つ食べても大丈夫です』(略)
澤地が振り返る。
『そういう時、石牟礼さんは腹の据わったモノの言い方をするんですよ』」
放射能問題でも通じる話である。
一つ二つ食べても大丈夫です。
最後に寄せられた放送の感想は、「とてもよかった」が70数%。「よかった」と合わせた「好評」が95%超だった。2万人が見たという。
こうやって、視聴者の評価で、人も企画も次々に淘汰されていく。この世界を知らなかった私には、とても面白かったし、ネット放送もいいもんだなと思った。
この放送中、スタジオには10人以上のスタッフが立ち働いていた。
私に出演の声をかけてくれたAさんは、中心になって企画を運営する、いわばプロデューサー兼チーフディレクターだが、去年まで、ある民放の人気情報番組を作っていたという。聞くと他にも、地上波テレビ出身者が複数いた。いまもテレビの構成作家をやりながら、同時にネットの仕事もしているという人も。
彼らは「テレビはもうだめだよ」などと声高に言ったりしないが、私の目には、実に面白そうに仕事をしているように映った。
メディア事情が様変わりしつつあると言われるが、それを現場で見られて、とても勉強になった。