このところ、何年も会っていない昔の友人や知り合いからメールや電話をいただくということが続いている。
YouTubeに公開したチェルノブイリ映像のおかげである。
あの映像は、正味5日間だけの取材なので、表面をなぞっただけだと私は自覚している。それでも、たくさんの人が、「こういう情報をどうしてテレビでやらないのか」と私に言ってくる。求められていた情報なのである。
明日の夕方(8日17時30分〜19時)、90分の生放送で、チェルノブイリ取材報告をすることになった。いつもだと地上波テレビだが、これは「ニコニコ生放送」というインターネット放送。これまで全く縁のなかった世界である。1時間弱に再編集したチェルノブイリ映像を一挙公開、私がMCのジャーナリスト岩上安身さんを相手に取材報告する。
以下で見られるので、どうぞご覧ください。新しい情報も話します。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv55596938
今朝の朝日新聞を開いたら、解説記事を載せていた。フクロウの「ホー先生」が、読者に代わって、いろんな質問をしていく。これが間違いだらけで、とても気になった。
あることが「間違っている」というとき、いろいろな間違い方がある。
事実関係が違う場合もある。この記事は、「見方」が間違っていると思った。
「なぜ食糧不足か」と立てた問題の答えは、「穀物の生産能力が足りない。支援も減っている」だ。
まず、「国連の機関」(WFP)の報告で、穀物の生産量が425万トンなのに必要量は534万トンで輸入や支援で補っても85万トン足りないという事情が紹介される。
「成人が必要な栄養価の半分しか補えない。これさえ5~7月には中断する」という。
そこで、ホー先生「原因は何じゃ」と質問。
答え:「北朝鮮は耕地面積の狭さや冷涼な気候に悩まされながらも、1980年代には穀物生産が年間600万トンを超えていた。だが、社会主義国が崩壊した90年代から年間400万トン前後に低迷。旧ソ連などが安く提供していた資材やエネルギーがなくなり、農業の機械化が進まず、肥料も十分に作れないようだ」。
つまり、北朝鮮はがんばったけれど、ソ連崩壊でうまくいかなくなった。問題は外部的な要因だといっている。
ホー先生、さらに「自然災害もあった?」と聞く。
答え:「うん。90年代半ば、大規模な洪水などで生産量が350万トン足らずまで落ち込んだ。山を開墾し、農地を増やしたことが治水や保水能力を下げたんだ。当時の餓死者は数十万人とも200万人とも言われた」。
山の開墾という農政の失敗を指摘はするが、原因を一義的には自然災害、つまり外部的な条件に求めている。これは「間違って」いる。
1995年、北朝鮮は「百年に一度と言われる大規模な洪水」などを理由に支援を要請した。人道援助は台風、地震などの自然災害の被災国に与えられ、今年は日本も援助される側になった。しかし、これは緊急にして例外的な災害による被災であって、2年目か3年目には援助は打ち切りに向かう。
ところが北朝鮮は、それ以降、毎年ずっと援助を受けている。そのたびに、歴史的な旱魃とかまれに見る大雨などの理由をつけるのだが、15年も、とんでもない災害が連続して襲っているということらしい。陸続きの中国東北部や韓国では、「歴史的な災害」などないのに。「山の開墾」などの誤った農政が、災害に脆弱な国土にし、ちょっとした雨でも、「歴史的な大雨」の被害を出してしまう。原因は失敗した農政なのである。
さらに、根本的な指摘をすれば、北朝鮮は「食糧不足」などではない。
先日、アジアプレスの石丸次郎さんの報告会が東京であった。
今年は、90年代後半の大飢餓の時代以来、最悪の年になり、相当数の餓死者が出るかもしれないという。
だが、それに続けて「食糧不足ではない」とも言った。
それはなぜか。
実は、ここに、北朝鮮を見るうえで最も重要な問題が潜んでいる。
(つづく)