放射能による健康被害5-ヨウ素剤再び

takase222011-06-18

Youtubeの「チェルノブイリ−『フクシマ』への教訓」の再生回数が18日23時現在で2万8千400を超えている。
なかでも、第3編「がんと生きる被ばく者の涙」は再生回数が多い。やはり健康被害には関心が高い。きのうに続いて、ヨウ素剤配布について書く。
ネットを検索していたら、原子力委員会の「原子力施設等防災専門部会 被ばく医療分科会 ヨウ素剤検討会」の議事次第/速記録というのがあった。非常に興味深い文書である。
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/youso.htm
01年から02年にかけて、原子力委員会では、放射性ヨウ素を取り込むことによる内部被曝で、甲状腺がんが発生する可能性を認めたうえで、その予防のために安定ヨウ素剤服用の指針をつくろうとしていた。
「予測線量100ミリシーベルト」で、40歳未満を対象に、安定ヨウ素剤を配布するというもので、自宅や学校、避難所に常備するのではなく、避難先など周辺住民が集合する場所で、医療専門家の指導のもとに飲ませることになっている。
さらにこれらの文書では、「チェルノブイリ」と「我が国で同様の事態になることは極めて考えがたい」などの表現も見られるが、ヨウ素剤服用を含む防災訓練をすることが望ましいなどとも書かれている。
議事録には、「原子力災害が発生した場合には、揮発性の放射性ヨウ素の周辺環境への放出は、比較的時間がかかると考えられています。この間に、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)により、放射性ヨウ素の拡散等の予測計算を迅速に行うことが可能」などと自信たっぷりだが、今回、実際にはこうした情報が国民に提供されることはなかった。(資料第7−4)
安定ヨウ素剤は服用後72時間で体外に排泄されるから、事故直後の一発勝負なのだ。
服用基準の「100ミリシーベルト」が妥当かどうかはさておき、3月12日から24日までの「内部被ばく臓器等価線量」積算値を見ると「えっ」と驚く値になっている。
浪江町の一部は500ミリの線で囲われ30キロ圏に入らない飯舘村や川俣町の半分が100ミリ超えとなっている。
http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf
しかし、飯舘村の住民にヨウ素剤は配られず、多くの人が、そのままそこにとどまったのだった。
3月31日のロイターは、日本はもっと広く早くヨウ素剤を配るべきだったのに、そのタイミングを逸したというフランスの放射線専門家グループの見解を伝えていた。
《フランスのCRIIRADグループによれば、日本は放射能に対する甲状腺の感受性を低く見積っており、ヨウ素を投与すべきとする100ミリシーベルト(mSv)の閾値を下げなければいけないと言う。コリン・カスタニエは木曜日のインタビューで、迅速に実行できないと、今後数年で、予期されるよりかなり高い甲状腺ガンの発症増加を引き起こす可能性があると言った。「汚染が続いているので、現在でもまだ、ヨウ素を配布すべきだが、有効性は低下してしまっている」。起こりうる障害を抑制する必要がある。「実行に移すのに、まだ遅すぎないけれども、可能な限り広く、速く配布する必要がある」と言った。
 2009年にフランスでは、チェルノブイリ事故後に世界保健機構(WHO)によって設定された100のmSvの核災害時のヨウ素剤投与の基準値を50mSvに下げた。WHOはまた、子供、妊婦、母乳を与えている女性の場合はその基準をに10mSvに決めた原子力事故で最も大きな健康上のリスクを及ぼすものは大気中へのヨウ素131の放出である。ヨウ素131放射能は8日で半減する。吸い込んだり、飲み込むと甲状腺に集まり、甲状腺ガンのリスクを増加させる。この時にヨウ化カリウムを服用することで甲状腺へのヨウ素131の取り込みを減らすことができる。
 津波の5日後の3月16日に、日本の当局は、原発から半径20km以内の住民にヨウ素剤を服用するように勧めた。
 「日本当局は福島第一原発の周囲半径100-150キロメートルの地域にヨウ素剤を配布し、しかも事故のすぐ後にそうすべきだった」とカスタニエは言った。「ヨウ素剤には大きな副作用は全然ないので可能な限り広く配布すべきだ」。》
当時、私の目は福島原発に釘付けになっていて、ヨウ素剤配布を含む、周辺住民への措置にはあまり注意していなかった。いま振り返って、検証すべきことが多いと反省を込めて思う。
(つづく)