ビンラディン殺害でも事態は変わらない

takase222011-05-02

家の近くの通りがぱあっと明るくなったと思ったら、つつじが満開になっていた。
華やかだなあ。
ただ、今年は素直に季節を愛でたりできない感じがある。
朝日俳壇・歌壇から;
ゆるされよ甲斐路に花の咲き満ちし 山梨県市川三郷町 笠井 彰)
花が咲いても「ゆるされよ」と遠慮してしまうのだ。
ありふれた日々のけしきをよむこともあの地震からためらいながら ひたちなか市 沢口なぎさ)
俳壇は次第に元に戻りつつあるが、歌壇はまだほとんどが震災をよんでいる。詠み人も東日本が多い。選ばれた佳作を書き写す熱心なファンもいるらしい。
写経にも似て丁寧に震災の歌を写しぬ朝日歌壇の (埼玉県 吉野ミヨ子)
当然だが、つらい情景を詠む歌が多い。
みんなさ迷惑かげっから水飲まねようにしてんだ―ええがら飲まっせ 福島市 斎藤一郎
「飲まっせ」は「飲みなさい」という意味。
今日もまだ紙面埋める東北の死者の名を読む年齢を読む (彦根市 浜野寿美子)

さて、午後になって、オサマ・ビンラディンパキスタンで殺されたとのニュースが流れた。米軍特殊部隊が首都から80キロの豪邸を急襲して殺害したという。
パキスタン国内でのCIAの活動が非難され、米国はこの間、反米世論に配慮して、アフガンからパキスタンへの無人飛行機での爆撃も案慮しがちだと報じられていたので、ここまで大っぴらな軍事作戦を取るとは意外だった。ほとんど治外法権と言っていい振る舞いだ。
状況から推測するに、オサマ・ビンラディンを匿っていたのはパキスタン軍部の一部だったと思われる。とすれば、米国は危ない橋を渡る決断をしたわけだ。
だが、オバマ大統領が大勝利を自画自賛しても、対米テロの脅威は去らないだろう。
私は2004年に、インドネシアで「ジェマイスラミア」というアルカイダ系組織の幹部を取材したことがある。アフガンでソ連と戦うためアフガンで義勇兵として戦っているうち、アルカイダと信頼関係ができたという。
この幹部はインタビュー中、ずっと覆面をしており、素性について全く明かさなかったが、取材の後、ある爆弾テロ事件で逮捕され「本物」だったことが証明された。
彼によれば、自分がアルカイダであることを否定しないが、指揮や資金のルートで日常的につながっているのではないという。
アルカイダは、ブドウの房のような組織で、ピラミッド構造ではないんですね。ビンラディン亡きあとも、各組織が具体的に目標を持って動いていくことが考えられます」と敬愛大学の水口章教授が言うとおりだ。
数千人のアメリカ人がホワイトハウス前に集まり、USAコールで気勢を挙げたというが、見たくないものを見た気がした。人々の声と表情に「レベルの低さ」が出ていると感じる。
ここまで来るのに、アフガン、イラクと周辺国をどれだけ引っ掻き回したのか。
米国というのは100年前から行動様式が変わらないなと、自分の心の中に「反米」的なものを意識させられるのはこういうときである。
ビンラディンの死体を運び去って水葬にしたというが、思わず、ドイツや日本の戦犯を死刑にしたあと死体を秘密裏に処分した事例を思い起こした。