発送配電の分離とは2

takase222011-04-22

ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ監督)という映画がいま、立ち見がでるほどの人気だという。
原発に代わる自然エネルギーの提案映画」で、原発に反対する祝島自然エネルギーを推進するスウェーデンが対比されて描かれる。私は去年、初上映で観た。
スウェーデンのパートは、ほとんど教材用ビデオのようで、発送電の分離の話が中心だ。
発送電分離の問題は、多くの人にとってなじみがないと思う。まとまった解説があるので、ここで紹介しておきたい。
「日本の九つの電力会社は、地域ごとに発電から送電、配電まで一貫して担う『発送電一体』の体制にある。戦後、日本では電力業界が地域独占の形で再編成され、9社が自分の管内の電力に関して供給責任を持つようになった。つまり、電力会社が発電所を持ち、送電網を持ち、家庭に電気を配る。日本ではこの姿が当たり前と思われているが、ほとんどの先進国ではこれらの仕事は別の会社が行っている。電力の自由化を進めたからだ。
 ある発電会社が送電線を所有していれば、新しい発電会社は生まれにくいし、すべての発電会社が平等な条件で送電線を使うことにはならない。この考えから、欧州や米国では1990年代から、送電線部門を発電会社から切り離す『発送電分離』を行ってきた。そうした国では送電線網は公共的な会社が所有するか、公的な機関が運用し、どの発電会社も平等にアクセスできる『公共の電気の道路』になっている。
 日本でも2000年初頭に電力自由化が議論されたが、『発送電分離』は電力業界の反対でできなかった。(略)結局、日本の自由化は、工場やビルなど大口需要家がどの発電会社からでも電気を買うことができる『小売りの一部自由化』をしただけで終わった。
 電力業界と経済産業省との綱引きとしてみれば、一定の自由化を進めようとした経済産業省が負けた、といえる。いま先進国の中で発電・送電が未分離なのは日本くらいである。国際エネルギー機関(IEA)も2008年に出した日本のエネルギー政策の審査で『送電線を整備すれば、より多くの新エネを導入できる。日本のように導入が比較的低いレベルにある国には特に重要だ』とコメントしている。
 電力政策に携わってきた経済産業省幹部は自嘲気味にこう語る。『日本のエネルギー政策は、世界の流れとは異なり、独自に進化する《ガラパゴス》なんです』」
朝日新聞特別取材班『エコ・ウォーズ』P102〜より)
今週、複数の民放テレビで、「発送電分離」をテーマに特番をやりませんかと提案した。どのプロデューサーも、非常に面白がって聞いてくれたのだが、これは日本の電力会社が一番いやがっていることなんですが、やれますか?と聞くと、「あ、それは難しいな」と正直な答えだった。
ここを突破しないと、自然エネルギーが伸びにくいのだが。
写真は、チェルノブイリ原発30キロ圏内の廃村、ザレーシエ村。「森の中の村」という意味なのだそうだが、木が生い茂って、本当に森の村になっていた。