トキ野生の孵化なるか

takase222011-04-18

オフィス近くのビルの前に、桜が、これで終わりですよとでもいいたげに咲いていた。
きょうの朝日俳壇・歌壇では、どちらも原発を詠んだものが目に付いた。

原発の空のしかかるふるさとのここにいるしかなくて水飲む福島市 美原凍子)
わが町はチェルノブイリとなり果てし帰るあてなき避難民となる福島県 半杭螢子)
牛五頭飲めぬミルクを絞り終え那須高原へと避難する牛 (枚方市 澤 正宏)
背に肩に両手に喰い込む荷をさげて難民となる放射能避け (枚方市 澤 正宏)
避難所のおにぎり一つの朝食に我も加わる長蛇の列に (福島県 半杭螢子)
原発を逃れて来たる姪の手がしっかり抱くダックスフント ひたちなか市 猪狩直子)

一方、俳句は短いだけに、ばっさりと切った感じの句がならぶ。
金子兜太選より

誰が統(す)ぶやこの荒涼の春の惨(ざん) 日立市 加藤 宙)
春泥や無辜の民こそ偉大なる  (高岡市 野尻徹治)
春光の全て放射能塗れ (いわき市 馬目 空)
海・大地春乱心の我が故郷 (東京都 無京水彦)
春恨や津波のあとののつぺらばう (大船渡市 桃心地)
恋猫も連れ去られしか海神に (平塚市 熊沢晩遊)

第一句などは、怒りを句に叩きつけているようだ。


きょうは、トキに関するニュースが二つあった。
ひとつは飼育トキのヒナ誕生。
島根県出雲市は17日、市トキ分散飼育センターで、国の特別天然記念物トキのペアにヒナ1羽が誕生した、と発表した。
 同センターでの孵化は初めて。
 親鳥は、佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)から今年1月、分散飼育のために移された9歳の雄と7歳の雌。3月20日に産んだ卵が、この日午後2時35分頃、孵卵器の中で孵化した。ヒナは体長約15センチ、体重約63グラムで平均よりやや大きめ。性別は不明という。
 国は感染症対策として佐渡島以外での分散飼育を進めており、現在、出雲市など3か所で飼育されている。》(2011年4月18日06時34分 読売新聞)
もうひとつは、野生の孵化が成功するかもしれないというニュースだ。
環境省は18日、新潟県佐渡市で営巣し、産卵したとみられる放鳥トキのペア1組の様子を公開した。順調なら21日にもひなが誕生する。このほか4組のペアが巣を作り、うち2組が産卵したとみられ、その一方のペアのふ化予定日は19日ごろだという。ひなが誕生すれば国内の自然界では1976年以来35年ぶり、放鳥トキでは初めてとなる。
 3歳の雌が巣に座り込んで卵を温め、5歳の雄が約4分おきに巣に小枝などを運び入れる様子が約400メートル離れた場所から観察された。昨年も同じペアで産卵したが、ふ化しなかった》(毎日新聞
一度は絶滅した種を野生で繁殖させることができれば、世界的な快挙だ。
いまの日本を元気付ける明るいニュースになるに違いない。
きょうは、このための取材態勢を準備するのでてんてこ舞いだった。うまくいけば明日、孵化する。
期待して待とう。
チェルノブイリ訪問記は明日また。