福島原発で何が起きているのか3

今朝の朝日新聞の俳壇・歌壇をみると、のどかな別世界である。
きっとみな震災の前の作品なのだろう。
《美(うま)し国うまき酒あり山笑ふ》
大津市の人の作だが、はやくこんな俳句の似合う国にしたいものだ。
さて、被災地に何か支援をしたいと思っている人へ。
ツイッターでこんなメッセージを見つけた。これは賛成です。
《食糧を買いだめするなら、東北産の米や名産品を! それが被災地への直接支援になる。
http://buy-for-tohoku.blogspot.com/
まだまだ予断を許さない福島原発の事態。
いくつかの地点で野菜や牛乳から規制値を越える放射性物質が検出されている。これは、かなり広い範囲に汚染が及んでいることを示す。
《菅政権は21日、規制値を超える放射性物質が検出された農産物について、福島、茨城、栃木、群馬の4県に対して、県単位で出荷停止を指示した。枝野幸男官房長官が同日夕の記者会見で明らかにした。東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響によるものだと認定し、原子力災害対策特別措置法に基づいて行った措置だ。
 指示対象になる品目は福島、茨城、栃木、群馬の各県産ホウレンソウ、かき菜と、福島県産の牛乳。出荷停止期間は「当分の間」としている。枝野氏は会見で「人体に影響を及ぼす数値ではないので、過剰な反応のないよう冷静に対応してほしい。出荷停止にしているので、基本的に流通しているものに健康被害を与えるものはない」と強調。今回の措置は、対象県産の農産物への風評被害を防止する狙いだと説明した。対象となる農家には、出荷停止に伴う減収分を東京電力や国が補償する見通しだ。(略)
 食品衛生法による出荷停止は、規制値を超えた農産物を生産した農家にしか適用できず、効力はほとんど期待できない。そのため、県単位で出荷停止を指示できる原子力災害特措法に基づく措置に踏み切った》
福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任した、山下俊一・長崎大教授(被爆医療)が、今朝の朝日新聞で「正しく怖がって」という訴えをしている。
「一度飲んだり食べたりしただけで健康への影響はない値だが、今後は口にしないほうがいい」。避難範囲の30キロは妥当な判断。「放射能は『正しく怖がる』ことが必要だ。行政が住民ときちんと信頼関係を維持できるよう、客観的なデータを迅速に提供すべく、助言していきたい」。
「正しく怖がる」とは言いえて妙だが、今の情報の出し方はそうなっていない。
がんの告知には賛否両論あろうが、原発事故では国民にしっかり告知すべきだ。
何ミリシーベルトになった、白煙が上がっているなどの個別的な情報を知らされても、危機の全体状況は分からない。
肺の黒い影が1センチになったとか腫瘍マーカーが少し上がったなどの情報は、それがどのくらい危なくて、今後どんな事態が予想されるのかを知るためにある。
いま出ている放射性物質は何が原因でどこから漏れているのか、今後ありうる最悪の事態はこうで、いまこういう方法で食い止めようとしている・・・こういう説明なしに、「大丈夫だ」「冷静な対応を」「すぐには健康に影響を与えない」と繰り返すだけでは「正しく怖がる」ことはできない。
きちんと情報が出されれば、あとは一人ひとりの決断を優先すればよい。例えば「うちは子供だけ『疎開』させて、大人はとどまろう」などと決められる。
通電がうまくいって、ポンプなど他の故障がなく、原子炉内の冷却水を再び循環できるようになったとしても、まだ応急処置にすぎない。プールの使用済み燃料棒も長期にわたって冷却しつづける手当てが必要だ。2号機の格納容器は破損しているから放射性物質が漏れ続けるおそれがある。
まだまだ危機は続く。
幸運を祈る。