大相撲の八百長問題によせて

takase222011-02-09

2月4日は、後楽園ホールに、プロレスラー安田忠夫の引退興行を見に行った。
安田は、大相撲の元小結で、転向して新日本プロレスに所属、チャンピオンにもなった男だが、ギャンブル狂で「借金王」と言われ、自殺未遂まで引き起こした。このままではいけないと、友人らが相談にのり、ブラジルで相撲を教えながら第二の人生をおくるという計画を立てた。
今回の引退興行は、ブラジルでの新規まき直しの資金を稼ぐ目的で行われた。
ところが、ここにも大相撲の八百長問題が影を落としている。
《今後は大相撲の経験を生かしブラジルで普及活動と人材発掘にあたる予定。だが、八百長問題が急浮上したため「(日本相撲)協会がなくなっちゃうかもしれない」とまたも迎えた失業の危機に困惑顔だった。》(スポニチ

以前、友人に元相撲取りがいて、八百長はあるんだろ?と聞いたことがある。
「うーん、言いたくないですね」と答えを渋ったが、しつこく聞くと、こういった。
「たとえば、仲のいいやつと当たる日、そいつの親が田舎から観戦しに来ていたとします。息子の晴れ姿を楽しみに見に来てるわけですよ。勝たせてやりたいな、という気持ちになるんじゃないですか」
いわゆる人情相撲である。こんなケースだと、私は、見て見ないふりをしたくなる。
八百長には、このほか、今回のメール発覚で判明した、互いに金で売買するものもある。より重大なのは、相撲仲間同士の星のやり取りではなく、外の世界から操作される八百長、つまり、相撲賭博で特定の力士にわざと負けさせる八百長である。相撲賭博はもちろん犯罪であり、暴力団が仕切っている。
相撲取りと暴力団の癒着は、昔から問題になってきた。
元相撲取りの友人も暴力団との付き合いはあったし、彼の後輩の相撲取りは暴力団の組員になった。暴力団は、力士の引退後の就職先の一つらしい。
相撲の世界を独自に取材した知り合いのフリーランスに聞くと、程度の差はあれ、八百長を経験した力士の割合はかなり多いという。あまりに潔癖な力士は疎んじられ仲間はずれにされることもあるらしい。その例が貴乃花だという。
放駒理事長が、八百長は「過去には一切なかった」と言った。誰しも「ウソだろう」と思う、こういう発言が、相撲協会への反発を増幅している。
また、放駒理事長は再発防止策として、懲罰と取締りの強化を打ち出したが、個々の力士を罰するのに力を入れるのではなく、相撲界の仕組みを変える努力をしてほしい。
八百長の背景には、十両陥落の恐怖、年寄株への執着などもあるから、報酬制度の見直しも必要になろう。
中島隆信慶応大教授は、部屋の師匠を審判部から外す、7勝7敗同士の取り組みを増やす、年寄名跡制度を改革する、引退力士の職場を開拓するなどの改善案を上げている。
引退力士がアマチュアの指導者になることも、就職口の確保につながるはずだ。
安田忠夫には、相撲指導者としてブラジルで成功し、後輩に範を示してもらいたい。