就活中のみなさんへ―道具は走りながら拾う

きのう、文部科学省が発表したところでは、今春卒業見込みの大学生の就職内定率(昨年12月1日現在)は過去最低の68・8%だったという。
このままにしておくと、税金も年金も健康保険料も払えない若者が大量に出てきて、今の社会の仕組み自体が維持できなくなる。菅首相、一に雇用、二に雇用と言うのなら、はやく政策を打ち出してほしい。
就活に走り回るのは学生だけではない。不況で首切りにあった人たち、会社が倒産に追い込まれた経営者など多様な年齢層の人が職を探している。
巷には就活に役立つ情報があふれ、講座に通って資格を取ったり、スマートフォンに替えたりとさまざまな対策がアドバイスされている。
焦燥感や落ち込みに襲われることもあるだろう就活中の人に、ちょっと元気になってもらえる話を紹介したい。
アフガンでの市民活動で知られる中村哲医師については、このブログでもたびたび紹介してきた。はじめ医療活動をしていたが、栄養失調と清潔な水不足を解決すべく井戸を掘り出す。さらに去年には全長25.5キロの用水路を完成させた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090828
中村哲医師が、朝日新聞の「朝日求人」欄に「仕事力−道具は走りながら拾う」を連載中だ。
《たまたま働く場所が海外にあるというだけで、私は国際協力という考え方をしていません。若い人には、まず現地で働くとは何かを理解して欲しいと思います。
インターネットが普及して、世界中のことが「分かるような気がする社会」です。現地に来る若者は、国際協力、環境問題、世界の南北問題といろんな課題を語ります。しかし、ものを造るにはとにかくシャベルを振るったり、発破作業をしたり、汗とほこりにまみれて労働しなくては始まらない。
日本では、どうも肉体労働を卑しい仕事のように考えているから、やってきた当初はみんな不満そうな顔をしていますよ。俺はエンジニアだからと言い張って、結局はシャベルを握ることもせず、この状況が受け入れられなくて帰国していく人もいる。
言葉も違い、環境も習慣も違う現地では、とにかくみんなと汗を流していくしかありません。やがて具体的に働き方が分かって、労働が身についてくる頃には、国際協力なんて理屈は出てこなくなる。20歳代の人でもそうなるまでに早くて半年はかかります。仕事に加わっていく時には、本人が自分のことについてよく洞察できるかどうかが非常に大事です。これをやろうと思うが、自分のリミットはこの辺りだという限界を認識して、役に立っていくこと。自覚なくしてそれを超えて無理をすると、自分が苦しむだけではなく周囲に対してもさまざまに不都合なことを起こしています。仕事の能力や道具は走りながら拾っていけばいいのです
そして、アフガン農民の中に《一歩入って、その人間としての営みを理解した若者が、これから強い仕事力を備えていくでしょう》と結んでいる。
(16日記事)
せっかく仕事について考えるのであれば、こういう大きなスケールのことも思い巡らしてほしい。そして、目の前の結果だけで、あまり思いつめないように。