今年はと思ふことなきにしもあらず

takase222011-01-06

今年の正月は家でゆっくり過ごした。
2日には谷保の天満宮に初詣に行った。よく晴れて気持ちがよい。おみくじは「小吉」。このくらいでちょうどいい。
届いた年賀状で楽しませてもらった詩や警句をいくつか紹介しよう。

今年はと思ふことなきにしもあらず正岡子規。「なきにしもあらず」というのがかえって心に期するものを感じさせますね)
すみれ程な小さき人に生れたし夏目漱石。政治だの社会だのにかまわず、ひっそりと生きたい・・今のちょっと内向きな雰囲気に合っていると思う)
いかなる港を目指すかを知らない人にとって、いかなる風もないセネカ「ルキリウスへの手紙」。お前はちゃんと目標を持っているかと問うてくる)
それでも今日、私は林檎の樹を植えよう(マルチン・ルターらしい。この前に、「たとえ明日、世界が滅びるとも」という言葉がある。ちょっと悲壮感ただよう前傾姿勢。正月にしか言えない)
1から始めるために10がある(これはオリジナルのようである。「千里の道も一歩から」というのと違ったニュアンスがいい)

こういう俳句、短歌、警句には書き手の気持ちがこめられており、読んでいて楽しいものである。
一方、元旦からいやなニュースがあった。大晦日に、栃木県で実家に帰省した弟が兄に刺されて殺されたという事件。痛ましい。
仏教でいう「四苦八苦」には、主に人間関係にかかわる「苦」がある。「愛別離苦」(あいべつりく)と「怨憎会苦」(おんぞうえく)だ。前者は、愛する者とは必ず別れなければならないという「苦」で、後者は、嫌な人とめぐり合い憎みあう「苦」だ。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20091127
肉親など親しい者との「怨憎」は上の二つを掛け合わせたような深い「苦」になりうる。家族だからこうしなければ・・と自分を追い込むのではなく「つかずはなれず」で距離を調整するのも人間関係の知恵なのだろう。
生きとし生けるものが安らかでありますように、と願わずにはいられない。
前の年の正月にどんなブログを書いていたのかと振り返ると、一昨年も、今年と同じようなことを考えていた。ぐるぐる回っているようで進歩ないなあと笑ってしまう。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090101
でも、今年はと思ふことなきにしもあらず。
もう少し、深く生きられるよう、今年は真面目に修行しよう。