風船は希望を乗せて北朝鮮へ

takase222010-07-17

局地豪雨のニュースが流れる一方、梅雨明けだそうである。
よく晴れて暑い一日になった。太陽の下でアサガオが花を大きく開いている。アサガオを見ると、夏休みを思い出す。子どものころアサガオを育てて観察記録を書いたりしたなあ。
さて、「守る会」ホームページ、きのう16日には依藤朝子事務局長の《対北風船行動により北朝鮮民衆へ希望のメッセージを》が載っていた。
依藤さんは、とても温和な、しとやかな女性で、市民運動をやるようには見えない。しかし、不正には強く憤る「義の女」でもある。物事をまっすぐに見る目を持っているのだろう。「救う会」、「守る会」などが「対北風船ビラ日本実行委員会」をつくり、6月からビラを飛ばし始めたが、これについて書いている。
瑞々しい文章に、政治の原点というものを改めて考えさせられた。行動のベースには、憎しみや恐怖ではなく、共感と愛がなければならない。

7月1日に文京区民センターで、救う会東京による「第1回風船ビラ活動とモンゴル訪問の報告会」がありました。これまで特定失踪者問題調査会北朝鮮に向けて風船を沢山飛ばしてきましたが、対北放送や風船活動をうまずたゆまず行ってこられた団体のお働きはとても大きなものと思います。

そして今回、救う会がビラを風船につけて軍事境界線付近から飛ばしました。守る会のビラを風船につけて撒かせていただけたことも本当にうれしいことで、感謝の気持ちでいっぱいです。ところで、このように北朝鮮に情報を送り込む活動について、ご提案を含めて考えたことをお伝えさせていただきたいと思いました。

ドイツ出身の政治思想家、ハナ・アーレントが書いた『全体主義の起源』をご存じの方も多いと思います。アーレントによれば、人間は孤立して根なし草のようになって(アトム化)、誰からも、さらには自分自身からも「見捨てられた」と感じた時、「自己矛盾」したくないという心境(正しいと信じた党に最後まで従おうとして、党から冤罪で死刑宣告を受けてもそれを受け入れてしまう心境)に陥ってしまうことがあるようです。そして、蛮行を続ける党への確固とした忠誠心を持ち続けようとするそうです。

こうした分析を見ても、私たち外部の者は、北朝鮮の人たちの「アトム化」を妨げるためにも、「みなさんは見捨てられていません」というメッセージを送り続ける必要があると感じます。

アーレントはさらに、新しい命の誕生と新しい世代の出現の可能性について、「始まりが存在せんがために人間は創られた」というアウグスティヌスの言葉を引用して、「この始まりは常に、そしていたるところにあり、準備されている。その継続性は中断され得ない。なぜならそれは一人々々の人間の誕生ということによって保障されているのだから」と述べています。これは、私たちに大きな希望を与えてくれる言葉でしょう。

北朝鮮では、幼い子供に(少なくとも財政的に余裕がある地域では)、全体主義国家の構成員としての生き方や考え方を徹底的に教え込みます。けれども、子供は無垢ですから、金正日がどのような人間なのか、北朝鮮がどのような社会なのかまだ知りません。そのため、国外から子供を対象にした番組や、ビラを北朝鮮に向けて送ることができたら、新しい世代の考えを変えていくことに加勢できるのではないでしょうか。平壌など特別な町に住んでいる子供だけでなく、文字通り「見捨てられた」コッチェビ(浮浪児)を励まして、「あなたたちのことをいつも気に留めて、見守っている人がいます」というメッセージを伝えられたらどんなによいでしょう。北に情報を発信している団体には、子供への呼び掛けを送ることについても検討していただけないでしょうか。

北朝鮮に外部情報を伝えることはとても大切なことだと思ってきましたが、アーレントの本を読み返してその重要性を改めて感じます。ただ、これと関連して一つ残念に思うことは、各国政府、特に韓国政府が北朝鮮への戦略的な情報の発信をあまり積極的に続けてこなかったということです。

北朝鮮の徹底した洗脳教育」という言葉をこれまで何度となく耳にしましたが、それに対抗するために、各国は北朝鮮にどれだけの情報を送ってきたのでしょうか。韓国や日本をはじめとし、各国政府には、北朝鮮への情報の発信と収集にさらに多くの力を注いでいただきたいと思います。自分は「見捨てられた」と国民がそろって感じた時に全体主義が力を得るのだとしたら、「見捨てられてはいません」と繰り返し伝えることで、その力を弱めることができるのではないでしょうか。

アーレントは「全体主義支配は・・・それ自身の破滅の核心を自己のうちに含んでいる・・・」とも述べていますので、この「破滅の核心」が何なのか、政治家や官僚の方々に真剣に考えていただきたいと思います。(依藤朝子)

口座を開設しました−対北風船ビラ運動へのご協力のお願い

既報の通り、韓国で6/23、6/25に対北風船ビラ60万枚を飛ばしてきました。今後もこの運動を続け、計600万枚を飛ばそうと計画しています。
この度、対北風船ビラ運動の募金口座を開設しましたのでお知らせさせていただきました。経理事務は救う会で行います。ご協力の程、宜しくお願いいたします。

■募金先

( 1)郵便局備付けの郵便振替用紙 00140-0-346130 対北風船ビラ日本実行委員会
( 2)各金融機関から郵便振替口座への振込 
店名019 預金種目 当座口座番号 0346130
( 3)銀行口座 みずほ銀行 池袋支店(230) 
普通預金 1541816 対北風船ビラ日本実行委員会