普天間の移転先はいらない?2

 アメリカは沖縄の海兵隊をグアムに移転させる計画なので、沖縄の中に普天間の「移転先」を用意する必要はないのではないか。
 実は、宜野湾市はずっと前から具体的な公文書を挙げながら、日本政府にこう訴えてきた。恥ずかしい話、私は知らなかったのだが。去年10月の鳩山総理宛要請文にはこうある。
《(略)最新のものとしては、2008年9月15日に国防総省が、海軍長官の報告書として連邦議会下院軍事委員会に提出した「国防総省グアム軍事計画報告書」があります 。
 その中で、普天間基地の中型ヘリ部隊を含めて具体的に部隊名をあげて説明しています。現在、普天間飛行場とキャンプ瑞慶覽に常時駐留している第1海兵航団関連部隊は、KC130部隊関連を除いて、全部隊名がそのリストでグアムに移転する海兵航空司令部要素として挙げられています。2006年5月のロードマップでも、「約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する」とされていることから、普天間基地の海兵航空部隊は、KC130を除いて、グアムに移転するものと考えられます。
 コーンウェイ米海兵隊総司令官が今年6月4日の上院軍事委員会に日米再編協議における重要な決定の一つが、「約8000人の海兵隊員の沖縄からグアムへの移転である。これは、沖縄で海兵隊が直面している、民間地域の基地への侵害(encroachment)を解決するためのものである」と報告し、普天間代替施設についても「4年ごとの国防計画の見直し(QDR)の中で検討している。普天間代替施設のクオリティーを含めて検討し、QDR勧告が出る」と答え、計画変更の勧告についても「検討に値する修正案がある。普天間代替施設は完全な能力備えるべきだが、沖縄では得られそうもない。グアムや周辺島々、他のアジア太平洋地域で訓練にふさわしい場所を検討している。最終決定までには海兵隊で検討し、日本政府との交渉も必要」と答えています。以上のことから対米交渉において、普天間飛行場の県内移設によらない普天間飛行場の閉鎖・返還は可能なものであると考えています。》
 ホームページには「沖縄からグアムおよび北マリアナテニアンへの海兵隊移転の環境影響評価」の抜粋訳が載っている。原文は8千頁。宜野湾市はこれらの文書を翻訳して研究している。すごい自治体だ。
 移転を前提にした実に細かい調査だが、その中で、「移転候補地の分析概要」(11頁)が興味深い。
 海兵隊の移転先として、沖縄、ハワイ、マリアナ(グアム)、フィリピン、タイなど9箇所が挙げられ、比較評価した表である。判断基準は「同盟及び条約上の要件」、「対処(配備)時間」、「活動の自由」の三つ。例えば、ハワイなどは「対処(配備)時間」でペケがつく。台湾有事などには遠すぎて迅速に対処できないからだ。三つともクリアしている(伊波市長は「三ツ星」と表現した)のがマリアナ(グアム)で、沖縄は一項目(対処時間)しかクリアしていない。
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/100317_tenpsiryo_5.pdf
 つまり、アメリカ自身が戦略的な観点から、グアムが最適だと評価しているのである。
 また、2008年9月の「国防総省グアム軍事計画報告書」("Report on Department of Defense-Planning Efforts for Guam”)を英文で読んでみたが、たしかに、伊波市長の言うとおり、普天間海兵隊はほとんど移転対象になっていると解釈できる。
http://www.city.ginowan.okinawa.jp/DAT/LIB/WEB/1/080915Guam.pdf
 アメリカ自身がグアムに引越す考えなのに、日本が「移転先」を探さないとアメリカのご機嫌を損なうかのような議論がされているのはなぜなのか?
 また、この話題が露出するのがBSなどに限られ、メジャーなテレビ、新聞に出てこないのはなぜか?とても大事なことなのに・・・