「情熱大陸」坂茂さんの言葉

takase222010-03-29

ゆうべ28日の夜、建築家の坂茂(ばん・しげる)さんを取上げた「情熱大陸」が無事放送された。
坂さんは、むしろ外国で有名で日本ではあまり知られていない。白を基調にした開放的な建物が多い。吉永小百合が出るシャープのCMに出た白い「壁のない家」は彼の作品だ。成蹊大学の図書館(photo)や銀座のスウォッチビルには、坂さんの独特な空間感覚が現れている。
坂さんはいま、13カ国に33ものプロジェクトを抱えているからとにかく忙しい。移動につぐ移動で、同じ町で3泊を超えることはない。その坂さんを追って、今回の取材は、米国、ハイチ、ドミニカ共和国、フランス、イタリア、アラブ首長国連邦と日本を入れて7カ国に及んだ。取材国の多さではおそらくこの番組始まって以来だろう。
ハイチの家を失った人々に紙管のテントを提供するプロジェクトは、坂さんが自ら資金集めをしている。
《今回の仮設シェルターは、全てサント・ドミンゴで調達可能である紙管(ポリウレタン防水)と合板ジョイントとプラスティックシートでできている。一軒分の材料は約3万円で、それを50軒と輸送、交通費、宿泊費などで300万円を目標に募金を行っている。》(ホームページより)
共感した方はぜひ寄付していただきたい。http://www.shigerubanarchitects.com/SBA_NEWS/SBA_news_4.htm
番組では、坂さんがカメラの前で発した言葉が印象的だった。
ハイチの現場で;
《やっぱり人災ですよね。地震で人は死なないです。地面が揺れても。
建物が壊れてそれが落ちてきて人が怪我したり亡くなる訳ですから。誰かが建物を作った人がいるわけで、建築家の責任です。
設計の問題と工事が手抜きであった可能性が非常に高い。》
ドミニカ共和国を車で走りながら;
《以前は、若い建築家が大きな仕事を取ったとか、賞をもらったとか聞くとジェラシーを感じたけど、神戸の仕事をしてから、そんなことが気にならなくなったんです。自分にできることがわかって将来のスタンスが見えたように思いました》
翔ぶが如く』など歴史小説が愛読書だという。
司馬遼太郎好きなんですよ。江戸末期から明治の日本人は素晴らしいですね。行動力があって・・・。
人生の目的なんかあまり考えないですね。いつ死ぬか分からない。いつ人生が断たれても、あれをやっておけばよかったなどと後悔しないようにしておきたい》
完成間近のフランスが誇る現代美術の殿堂ポンピドゥセンター別館にて;
《いま人がいなくて、がらんとして魅力ないですね。建築は人が入ってはじめて完成なんです。人が入って気持ちのよさを感じる空間を作りたいですね。》
《前の世代の建築家は日本的なものを武器にするんです。そのほうがエキゾチックで売れるから。僕はそういうことは絶対したくないんです》
一番印象に残ったのは、「建築の仕事は9割方はデザインじゃないんですよ。人と話していること。施主、役所の人、ゼネコンの人だったり・・・」に続けて言った次の言葉だ。
だったり次の言葉だ。
《デザインなんて、そんな重要なことじゃないんですよ。
デザインが上手い建築家もいれば、下手な建築家もいるけど、両方必要なんですよ。
デザインのいい建築ばかり必要とされてるわけじゃない、世の中では》
たしかに街中、坂さん設計みたい建物ばかりだったら困る。
仕事と社会的需要の関係について考えさせられる。