ハイチの悲劇は人災

takase222010-02-18

2週続けて日曜夜のフジTV「ジャーナる!」で特集をプロデュースしている。14日は、地震一ヶ月のハイチ現地報告。こんど21日は助産師の特集だ。
このところ、担当する作品四つほどが同時進行していた。取材中のものもあれば、編集に入っているものもある。複数の取材班が海外に出ていた間は、時差のため、早朝、深夜を問わずメールが入った。娘のダブル受験もあって、何かと落ち着かない日々である。
ハイチ特集では、旧知の友人である佐藤文則さんがリポートした。
写真は崩壊した大統領宮殿。これが象徴するように、ハイチでは国家自体が崩れ落ちたような惨状だという。犠牲者数は、インド洋津波の22万人を超えたと推定されるが、いまだに正確な数字は出ていない。混乱は続いている。
佐藤さんはフォトジャーナリストで、22年前からハイチに通っている。何冊も本を出していて、ハイチ取材の第一人者である。http://bbs.fumi23.com/show.php?article_id=886426&host_id=bbs&view_type=1&type_id=&page=new

アメリカはハイチ地震が大きな関心を呼び、多くのミュージシャンや俳優、アーティストが救援に立ち上がっているが、日本ではあまり報道もされない。日本にはほとんど知られていない国である。
ハイチは他のラテンアメリカ諸国とは違って、フランスの植民地だった。ハイチ人は、アフリカからの奴隷が先祖で、フランス語をベースにしたクレオール語を話す。
ハイチ人たちは独立闘争に立ち上がり、ナポレオンが送った2万2千人のフランス兵と戦い、1804年についに独立をかちとった。西半球では米国に続く2番目の独立で、「世界初の黒人共和国」となった。
かくも栄光ある歴史を持つハイチだが、今では世界最貧国の一つで、政変が絶えず、ながく国連の多国籍軍が展開している。インフラも貧弱で、まともに統治システムが機能していない。そんな国に大地震が襲ったからたまらない。
ある国際救援団体による、最も惨めな被災地だという。

佐藤さんが、ハンカチで鼻を覆いながら、あっちにもこっちにも死体が転がっているとリポートしていたが、地震から一ヶ月も経って、死体が回収されていないのだ。佐藤さんによれば、地震自体は天災だが、地震がハイチ人にもたらした悲劇は「人災」だという。
長期的な支援が必要だが、最も重要なのは、人々が国を支えようと立ち上がり、しっかりした統治機構を作りあげることだと思った。
それにしても、佐藤文則さんには感心させられる。
私の周りで、海外を精力的に取材してきたジャーナリストが、食えなくなって、どんどん仕事をやめていく。そんな中で、日本に遠く「商売」には非常に不向きなハイチという取材対象に22年も通い続けるのは大変だろう。こういう志のあるジャーナリストが報われるようになってほしい。