体制危機で迎える将軍様の誕生日

将軍様の68歳の誕生日。
北朝鮮ではデノミが散々な失敗に終わったことがはっきりした。
韓国の有力紙「朝鮮日報」によると、金英逸(キムヨンイル)首相が、《平壌で、準備不足のままデノミを無理に進めたと認め、「人民に大きな苦痛を与えることになったことを心から謝罪する」と発言。誤った措置を是正する意向も明らかにしたという。デノミ実施に伴い禁じられた市場取引を再開することや、外貨使用禁止措置の解除を指しているとみられる。》(読売)
自由市場を取り締まり、外貨も使うな、買い物は国営商店でしろと命じたのだが、そもそも肝心の買う「モノ」がない。例を見ない超インフレが発生、大混乱になっている。さらに、「50日戦闘」だ「150日戦闘」だと人々は毎日動員され、商売ができない。稼ぎが激減して、一般人の生活はこれまでになく苦しくなっているようだ。
「人民がまだトウモロコシ飯を食べていることに最も胸が痛む。今わたしがすべきことは、人民に白いご飯を心ゆくまで味わわせることだ」(1日の労働新聞)と金正日は語ったという。父親の金日成は、92年の年頭の辞で、「すべての人が等しく白米の飯と肉のスープを食べ、絹の服を着て瓦屋根の家に住むというわが人民の世紀的念願を実現することは、社会主義建設において当面、われわれが達成すべき重要な目的である」と述べた。
父の遺訓を実現できていないことを認めたわけで、いかに北朝鮮社会がひどい状況に陥っているかを示している。
前日の15日、外国特派員協会で、金正日体制打倒の宣言についての会見があった。「特定失踪者問題調査会」の荒木和博代表は、「金正日体制が非常に揺らいでいる今が、拉致問題解決にとっても絶好のチャンスだ」と語っていた。http://news.tbs.co.jp/20100215/newseye/tbs_newseye4357102.html
宣言についてはこないだ書いたが、署名者は270名になったという。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100129
また、会見では、短波放送やビラ風船などの情報戦の重要性が指摘された。これに関して、先日、荒木さんから、北朝鮮の人民保安省(警察)、国家安全保衛部(秘密警察)の合同声明の全文翻訳をいただいた。この声明には、北朝鮮の体制危機が率直に表明されている。「特に調査会が韓国のNGOに協力して行っているバルーンプロジェクトが極めて大きな効果をあげていることが分かります」(荒木氏)
ちょっと長いが、ここに全文を紹介する。
《 民族の尊厳と安全は眼中にもなく外部勢力に追従して我々の自衛的な核抑止力を除去しようとする「先核廃棄」策動は一層執拗に繰り広げられており、我々の神聖な領海・領空・領土に対する軍事的挑発と体制転覆をねらう情報謀略騒動は極度に達している。

 その代表的な実例がまさに朝鮮西海で不法無法の「北方限界線」固守を狙って繰り広げている南朝鮮軍部好戦狂たちの冒険的な軍事的蠢動であり前縁と海岸、国境地域を通して行っている分別なき「対北内部攪乱」作戦である。

 日を追ってさらにひどくなっている反共和国ビラ散布行為だけを見ても前縁部から縦深へと拡大しており、あらゆる情報力と手段が投入されたおろかな体制転覆策動はわが国周辺から内陸部深くまで広がっている。

 ここには南朝鮮の「国家情報院」と「機務司令部」を初めとする悪名高い情報謀略機構が突撃隊として立ち上がっており、「国防部」と「統一部」、「外交通商部」を含めた当局機関、これらの直接的な操縦と指揮を受けている軍部好戦集団と極右保守勢力、さらには人間として生きることをやめゴミ捨て場に落ちぶれていった人間のクズまで動員されている。

 全ての動きは南朝鮮当局がありもしない我々の「急変事態」を意図的に助長しながら既に完成した「作戦計画5029」と「非常統治計画・復興」を実行する道に立っていることをそのまま見せつけている。

 黙って傍観することができない現事態に関連して朝鮮民主主義人民共和国人民保安省と国家安全保衛部は次のような原則的立場を内外に明らかにするものである。

1、我々の人民保安、並びに安全保衛軍は尊厳高き社会主義体制転覆と内部瓦解を狙う有象無象の反民族的、反統一的、反平和的策動を粉砕するため全面的な強力措置をとるであろう。
 民族に背を向け国に災いをもたらす逆賊どもにはこの国、この世のどこにも生きて呼吸のできる場所はない。

2、あらゆる敵対勢力の蠢動から我々の社会主義制度と国の安全を守るための聖なる闘争に白頭山革命強軍の銃床はもちろん、人民保安並びに安全保衛軍のすべての力量と手段が総動員されるだろう。

 われわれにはまだ全て語っておらず全て公開していない最先端の世界的な打撃力量と安全保衛手段がある。

3、南朝鮮当局は歴代反共和国対決狂信者、民族反逆者たちのような哀れな末路を辿りたくないならば民族的和解と協力、平和統一と繁栄に逆行するすべての謀略機構と当局機関を即時解散させその首謀者を民族共同の名前で葬ってしまうための相応の措置をとらなければならないだろう。

 大勢の流れを遮るために発狂しているすべての不順勢力を一掃してしまうための挙族的な正義の報復聖戦はすでに始められた。

 わが革命の首脳部を命をかけて死守し国の安全と人民の幸福を保衛するのは億万年代わることのないわが人民保安並びに安全保衛軍の第一の使命であり本分である。

 南朝鮮当局は統一祖国のその日「現代版乙巳五賊」になり民族の審判台に上がりたくないならこれ以上遅くなる前に分別をもって身を処さねばならない。》(2月8日)