タイガーの醜聞に思う1

takase222009-12-09

いつものように、夜11時ごろテレビを観ながら晩飯を食べていたら、タイガー・ウッズに愛人がいたというニュースが流れていた。
私は、単純に、タイガーの母親がタイ人だったことを知り、関心を持ってきた。人格者のスポーツマンとして尊敬されていただけに、今回のスキャンダルは意外だった。愛人を持つという行為は「犯罪」ではないにしても、その数10人以上。ショックを受けた人は多いはずだ。
この騒動、人によって、いろんな感想があろう。
「頂点を極めると、女がワッと寄ってくるんだね。いいなあ・・」
「この世には、聖人君子なんていないってことさ」
「大金を持つと、人は変わるのかも」
「単なる女好きで、一つの個性だよ」
私はこんなふうに考えた。
この事件は、いま支配的な「成功か失敗か」という価値観に対する、警鐘ではないのか。自分をふり返り、周りを見回しても、この世は主に「成功」という価値に支配されているように見える。例えば、うちには受験生がいるが、子どもに高い教育を受けさせたいと親が望むのはもろに成功を願っているからだし、もっと広く見ると、躾の多くもそれに添っているように思われる。
かつてこのブログでややシニカルにこんなふうに書いた。
《「寝る前には歯を磨くように」、「嘘をつかないこと」、「何事も一所懸命にやりなさい」・・・。
我々が子どもたちにこんなことを言い聞かせるのは、彼らが健康で、周りと摩擦を起こさずに暮し、できれば成功してほしいからだろう。大きく言えば「世渡りの知恵」を親は子どもに教え、贈ろうとする。》http://d.hatena.ne.jp/takase22/20070915
この価値観からすれば、失敗した者つまり「負け組」が、鬱積した不満を爆発させるというのは理解しやすい。
7人もが殺された、去年の秋葉原通り魔事件では、動機は確定していないものの、転々と派遣で働き女性にももてない、いわば「負け組」の犯罪だったと報じられている。あの容疑者は、ネット掲示板にこんな書き込みをしている。
《負け組は生まれながらにして負け組なのです まずそれに気付きましょう そして受け入れましょう》。
さらに事件後には、掲示板に《格差社会の英雄》、《勝ち組に対して事件を起こすことで一矢報いた》など、容疑者を支持するかのような書き込みがたくさん寄せられたという。社会的には、「負け組」の暴発という評価が確定しているようだ。
では、タイガーはどうなのか。
彼はただの「勝ち組」などではない。メジャー大会4連覇達成、世界ランキング1位、賞金王8回、現在年収100億円・・・。名声も財産も得て、世界で並ぶもののない高みにたどり着いた。それでも満足できないのか。
女性スキャンダルといえば、クリントン大統領のモニカ・ルインスキーとの不倫事件が思い出される。
アメリカ合衆国の大統領といえば、世界最高の権力者だ。「成功」の極致といっていいだろう。それなのに、クリントンに限らず、大統領たちはさまざまな「不祥事」、場合によっては「犯罪」を歴史に残してきた。
どうやら、人間は、成功しても失敗しても、心が満たされることはないらしい。
ということは、人間にとって大事なのは「成功か失敗か」ではないのではないか。
(つづく)