ふり返ってのスクープ―足利事件2

takase222009-07-26

6月4日に17年半ぶりに釈放された菅家さんは、6月7日のサンデープロジェクトに生出演した。
この日は番組の後半がイラン大統領選挙の特集で、私もテレビ局につめていた。冒頭の足利事件の特集を、私たちは控え室のテレビで観ていた。菅家さんが事件当日の様子を説明しはじめた。
「パチンコ屋さんの駐車場から、私の自転車を使って、両替所まで行って、両替を済ませてから、真美ちゃん(殺害された4歳の女児)が下にいたんです。両替所の前に。
それで、真美ちゃんの座ってる姿を見まして、それで、真美ちゃんに声をかけまして、『自転車に乗るかい』と誘って、それから真美ちゃんを後ろに乗せて、両替所から自転車で土手の方へ誘っていったんですよ・・・」
ええっ、ちょっと待って・・菅家さん、真美ちゃんを実際に連れてったの?
私以外のスタッフも、驚いて画面を凝視している。
「ずっと行きまして、河川敷まで行きまして、自転車を河川敷の上に置きまして、それで、真美ちゃんを降ろして、それから、真美ちゃんの首ですか、絞め・・・」と菅谷さん、両手を自分の首を絞めるような仕草をした。何だこれは?実際に殺していたのか?
ハラハラさせられた。この番組を観た人はみな驚いたと思う。(このときの映像はまだYoutubeに載っているので観れなかった人はどうぞ。http://www.youtube.com/watch?v=emgdR5voFO8
佐藤弁護士が「誤解されたと思いますが、こういうふうに警察にしゃべったんですよ」と説明。むりやり警察にしゃべらされたんでしょう、との田原氏の質問に、佐藤弁護士はそうではないという。このストーリーは警察ではなく、菅家さんが懸命に考えて作り上げたのだという。
なぜ、やってもいないことをやったと、自分から進んでストーリーを作るのか。私の周りの人に聞くと、この辺が理解できないという。
今回の『WILL』用に書いた日垣隆さんの説明によると、裁判の中では、菅家さんが「知能は薄弱境界線(IQ77)」であり「相手に迎合しやすい性格」であることが何度も触れられていたという。だからこのことは秘密ではないのだが、釈放後は、メディアでも伏せられた。
《そもそも、「そのこと」等ゆえに、誤った「自白」が誘導され犯人にデッチあげられたのだから、今になっても「そのこと」は重要なポイントのはずである》と日垣さんは言う。
一方、事件当時、菅家さんが犯人だと疑わずに大々的な報道を繰り広げたメディアもきちんと自己点検すべきだと日垣さんは主張する。それなしに、刑務所では禁じられていた焙煎コーヒーを飲んだり、念願のカラオケに行ったりというさわやかな「今日の菅家さん」のニュースを作り続けてよいのですか、と。
やるべきことをしないのに、プライバシーへの配慮とかで必要なことを伏せているのではないかと日垣さんは問題提起しているのである。
さらに問題なのが、冤罪の「構図」であった。
(つづく)