朝日新聞の先月末、スクープ記事を載せた。
《1960年の日米安保条約改定の際、核兵器を積んだ米艦船の日本寄港や領海通過に事前協議は必要ないとする秘密合意を日米両政府が結んだとされる問題で、元外務事務次官の村田良平氏(79)が29日、朝日新聞の取材に「そうした文書を引き継ぎ、当時の外相に説明した」と述べた。》
これをきっかけに、非核三原則に関する論議が再燃し、衆議院選挙の争点にも浮上している。
これについて、19日の産経新聞に古森義久氏(ワシントン駐在編集特別委員)が、毎日新聞記者だった81年の自身のスクープに触れている。
《「核兵器を積んだ艦艇が日本の領海を通過することや港に入ることは、まったく問題がないとする口頭の合意事項が日米両政府間にはあるのです」−。
5月の陽光がさんさんと注ぐボストン郊外のエドウィン・ライシャワー元駐日大使邸でこんな衝撃的な言葉を初めて聞いたときの情景がまた思いだされた。
最近の日本での村田良平元外務次官や鳩山由紀夫民主党代表の非核三原則に関する発言で「持ち込み」について想起させられたのだ。いずれも1981年のあの「ライシャワー発言」に沿った言明だったからである。(略)
ライシャワー氏の答えは驚くほど率直だった。
「日本側のいう『持ち込み』と米側のいう『イントロダクション(Introduction)』とは2つの異なることを意味したのです」
日本政府は2つの言葉は同じ意味だとして、核兵器搭載艦艇の領海の通過や寄港も非核三原則の「持ち込ませず」の違反になると宣言していた。ところが米側は通過も寄港もイントロダクションではなく、非核三原則の違反にも日米間の事前協議の対象にもならないと解釈してきたというのだ。
「英語のイントロダクションとは核兵器を陸上にあげて配備や貯蔵をすることだけを意味するのです。日本政府は『持ち込み』との違いを国民にも説明すべきです」
ライシャワー氏は日本政府がその意味の違いを知りながら核搭載艦艇の通過も寄港もないと言明するのはウソをつくことになるとまで述べたのだった。
この発言は毎日新聞で「米、核持ち込み寄港」「日本政府も承知」「ライシャワー元大使が証言」という見出しのスクープ記事として大々的に報道された。当然ながら大騒ぎとなった。日本政府は内外から非核三原則の虚構を追及された。だが最後までライシャワー氏が指摘したウソは認めなかった。
村田元次官はそれから28年が過ぎたいま、当時の政府部内にいた立場からそのウソをウソだと証言したわけである。》
なぜ28年前に、この問題をきちんとしておけなかったのかを問いたくなる。
最近もう一つ、《ふり返ってのスクープ》を目にした。これは衝撃的だった。
(つづく)